Webマーケティングに関わる方なら、「LTV」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
LTVは知っておくことで、1人の顧客獲得にかけられる費用を算出することが出来るなど、Web担当者には必須の知識と言っても過言ではありません。
今回は、LTV(顧客生涯価値)の意味や算出方法など、最低限知っておきたい基本知識を解説いたします。
初めて聞いた方はもちろん、すでに言葉を知っている方も再度この機会に理解度を深めてみてはいかがでしょうか。
知っているからこそ、改めて基本に返って用語の理解を深める事も今後のマーケティングにもきっと役立つでしょう。
いまさら聞けない「LTV」とは
では最初に、改めて「LTV」について復習をしていきましょう。知っているから大丈夫だという人は復習のために、そして、知っているだけではなく知らない人に説明出来る位に内容を理解していきましょう。
LTV|Life Time Valueの略。日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれています。
Webマーケティング業界以外の方でも、「LTV」「顧客生涯価値」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
この「LTV」とは、顧客(ユーザー)が生涯を通じて企業にもたらす価値(利益)の事を示しています。つまり、Webマーケティング以外の業界においても顧客がある企業においては「LTV」は存在することになります。
そして、基本的な考え方として、顧客ロイアルティ(企業や商品への執着)があるほど、LTVの数値は高くなるとされています。つまり、気に入っていればいるほど、企業にもたらす価値が高い顧客であるということです。簡単に言えば、リピーターとなって商品の購入を繰り返すということになります。これは、商品の購入だけではなく、美容院やエステ等のサービスを提供し続ける場合にもLTVの概念は存在することになります。
この様に顧客に提供するサービスがあれば、「LTV」の概念が存在するということを理解しておくとよいでしょう。
LTVが重要視される理由
ではどうして、LTVが注目するのを整理していきましょう。
その理由は、大きな理由が2つあるとされます。
- CRMが行われる
- サブスクリプションビジネスがある
この2つについては、LTVについて解説している様々な紹介記事でも取り上げられています。では、この1つ1つを見ていくことにしましょう。
CRMが行われる
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
CRMとは、顧客の基本情報収集から、基本情報を元にした購買履歴やクレームの内容を一元管理し顧客とのコミュニケーションをとることで、収益の拡大を目指していく手法です。
Webマーケティングは、データの取得と活用をしていきます。この手法はデータドリブンマーケティングと呼ばれ定着してきました。
このCRMとデータドリブンマーケティングの2軸を活用し顧客の行動分析を深めていくことが、今の時代では重要視されています。
データドリブンマーケティングについて
データドリブンマーケティングには、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
と呼ばれる手法があります。
マーケティングには「1:5の法則」があります。
この法則とは、新規の顧客獲得には既存顧客の5倍のコストが必要という考え方です。この数字を見るとお分かり頂ける通り、新規の顧客獲得は重要ですが、既存顧客の関係維持はコスト的にも有効であるということです。
その対策を講じる中で、CRMを活用することにより、顧客との関係性を維持していくということです。
サブスクリプションビジネスがある
そして、現在は、サブスクリプションビジネスに注目が集まっています。
「サブスクリプション」とは、一定のサイクル(毎月や年間)で対価を負担頂き、その間はサービスを使い放題という仕組みのことです。
このビジネスモデルとして確立しているのがサブスクリプションビジネスです。このビジネスモデルでは、「いかに継続してもらうか」ということが重要です。
この2つの理由からLTVが重要視される理由です。それは、この2つにはLTVで求めらる要素が必要だからです。
LTVを最大化する方法
繰り返しになりますが、「1:5」の法則を思い出してください。この法則の元になる顧客は、新規、既存共にその数が増えれば増えるだけコスト(費用)が増加します。しかし、LTVを高めることは、将来的な売り上げや利益を伸ばすことになります。
より具体的に、最大化する方法をご紹介していきましょう。
基本的な手法
- 1回当たりの購入単価をUPする
- 購入の頻度を短くする、次回購入までの期間を短くする
この2つが、LTVの向上の方法の中心となります。
方法①:1回当たりの購入単価をUPする
具体的には、従来よりも金額の高い商品の購入を促すことや、商品通しをセットにして購入単価をアップさせるなどです。
あくまで、顧客がキャッシュアウトする1度の単価を高くする方法です。
方法②:購入の頻度を短くする、次回購入までの期間を短くする
こちらも文字通りですが、購入の頻度を上げる。次回購入までの期間を短くするということは、簡単な事のようですが以外と難しいテーマです。
例えば、シャンプーやリンスなど女性がこだわる商品については、髪の長さにより毎月の利用料は様々です。
これを短くする方法にはどういった方法があるかを考える必要があります。
例えば、シャンプーのボトルを小さくし、1度の単価は従来よりも安価であっても月に2度購入することでトータルの金額はアップしている等です。
しかし、同時に途中で購入を止めてしまい他の商品購入へ流れていくことも抑制しなければなりません。
ここまでの紹介した手法は、顧客が支払う単価(費用)をアップする方法です。
当然ながらお客様が多くのお金を使用してくれることは企業にとっての利益創出では重要です。
顧客維持コストを低くする
もう1つの方法とは、顧客を維持するコストつまり経費を下げる方法です。前述の売上拡大と同時に、企業運営において経費削減は重要なテーマです。
これは、直接LTVには関係がありません。企業経費とLTVでは求める軸が異なるためです。
しかし、LTVを伸ばすためには経費を減らすことで、より商品の充実を図ることや商品の研究等に投資することも可能です。
顧客維持コストを下げる事には、企業運営で必要な経費を下げることにも連動しています。
今までかかっていた「CAC(1人の顧客を獲得するのに必要な費用)」「顧客維持コスト」を下げることは、決してサービスを低下させることではありません。創意工夫をすることで、より顧客の満足得ながら、顧客維持コストを下げることが必要になります。
その為には、LTVを十分に分析し有効な手法を施す必要があるのです。
だからこそ、LTVの最大限にする事が必要になるのです。
LTVの測定によりCPAを高める
※CPAとはCost per Acquisition、(顧客)獲得コスト
CPAとは広告費と理解してください。顧客の囲い込みや売上を拡大するには、広告費が必要です。
しかし、その費用が高すぎて売上を超えてしまうと赤字です。これは当然の仕組みです。
このCPAについては、「コストの設定」「売上の予測」の両軸で検討する必要があります。
多くの人にしってもらうために広告費を無制限にかけていくのでは意味がありません。その為には、予め「コストの設定」を行う必要があります。
コストの内訳には、広告費以外にも多くの費用が含まれます。その為、コストの構成と対象、内訳を精査してコストの設定をしていきます。
その際、商品の単価設定も同時に行いコストが販売単価を上回ることが無い様にしていく必要があります。同時に「売上の予測」を立てていきます。
単純には「販売個数×商品単価」の計算式ですが、それ以外にも既にご紹介しているセット販売などにより売上がどう伸びるかも予測していくことも必要です。
これは、セット販売等は販売戦略となりますので、こちらにもLTVは大きく関係します。顧客の志向により、どういった販売戦略が有効であるかは、売上の予測には大きな判断要素になるのです。
この様に、顧客獲得をしていく上にはCPAの概念が必要です。広告が必要ではありますが、高すぎても損をします。顧客獲得と顧客維持については、LTVとCPAは欠かせない要素であるということをおさえていきましょう。
LTVが必要ということは、LTVだけでは顧客の心をつかみ続けることが出来ないということを理解して頂くことにもなります。LTVとはあくまで、他の分析技法と組み合わせて顧客の満足を追求していく手法であるということ。その1つの軸がLTVである以上、LTVはWebマーケティングには必要不可欠な要素だということです。
LTVの計算方法
では、具体的にLTVを計算していきましょう。
LTVの計算方法は、以下の3つです。
それぞれの企業や分析対象に応じて、使い分けをする必要があります。
- LTV = 顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数
- LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
- LTV = (売上高 – 売上原価) ÷ 購入者数
ここで導き出されたLTVが分かると、新規顧客に必要とされるコスト目安が導きだされます。
合わせて利用するCPAも覚えておくことで効果的にLTVについて知ることができます。
改めて、CPAとは顧客一人あたりの獲得費用のことです。
の計算式で求めることが出来ます。
この様にLTVは、様々な角度で求めることが出来ます。LTVはそれだけ算出が重要であるということでもあり、計算できる観点も複数あります。3つある計算式のどれを利用するかは企業で選ぶと紹介させて頂きましたが、各企業の置かれている状況により準備できる要素が異なるからです。
また、LTVで求める価値観も企業により異なります。
参考までに具体的計算イメージも紹介しておきましょう。
<計算例>
LTV = (平均購買単価)x(年間平均購買頻度)x(粗利率)/(年間離反率)
たとえば、以下の場合のLTVを求めてみます。
平均購買単価 | 3,000円 |
平均年間購買頻度 | 5回 |
粗利率 | 70% |
顧客維持率 | 85% |
新規顧客獲得費用 | 15,000円 |
LTV = 3,000×5×70% / (1-85%) = 70,000円
などになります。
紹介しているLTVについての計算式は様々です。ご紹介している通り、何を軸として計算するかは企業により様々です。
企業の中でも、商品やサービスによっても変動しますので、予め軸となる項目や計算式、目的を整理して計算式を選択していくことが大事です。
しかし、計算式はあくまで計算式です。重要となるのは目的であり、その結果をどう活かすかであることを忘れないでください。
まとめ:LTVを分析して顧客の価値を最大化する
ここまでの内容は如何でしたか?
「LTV」という言葉を聞いたことがあっても、それを説明できる人は少ないかもしれません。Webマーケティングの世界において「LTV」とは基本に分類される用語ですが、これを本当の意味で最大限活用できている人は少ないとも言われており、基本だからこそ知っていて当たり前であっても企業においてLTVを追求することがいかに重要であり、かつ難しいことであるかを考えて頂きたいと思います。
実際に、「LTV」のサイクルは企業により大きく異なります。食料品や衣料品でも異なりますが、これが不動産などの場合ではどうでしょうか?一生に何度も家を購入する人は、決して多くはありません。こうして考えれば、LTVの考え方が企業や商品で大きく異なる事も十分理解頂けると思います。
では、不動産業界ではWebを利用しないかと言えば、大いに活用していることもご理解頂けると思います。
こうしたことを踏まえて、改めてLTVを分析していくことの難しさを理解頂き、基礎となる要素を抑え、今まで以上にLTVを操れる実力を身に着けていきましょう。