メンタルや気力が弱い人へ。 「やりたいこと」から探さないキャリア設計

キャリアの悩みについて話題になると必ず出てくるのが「やりたいことがない」という言葉だ。私が就活を考え始めた大学2年生――20歳の頃から定期的にキャリアについての話題を見かけるけれど、この10年間、常に大勢の人たちが「やりたいことがない」ことに悩んでいるように思う。

中にはずっと「やりたいことがないこと」をコンプレックスにしている人もいるらしい。私といえば、胆力がないので、新卒採用の就職活動をしている時に、「やりたいことから就職先を探すのは万人にできる方法ではないのでは?」と捻くれてしまい、諦めた。そもそも胆力どころか気力も薄いので、毎日を変えてしまいたいほど「これやりたい!」「達成したい!」と思うことがあまりなかったのだ。

しかし、こう長い期間「やりたいことが見つからない」と悩む人たちが存在し続ける様子を見ると、“やりたいこと”を見つける以外にも前に進む方法があることを伝える人がいてもいいような気がしてきた。

やりたいことに向かって諦めずに突き詰める強さも尊いが、時には逃げ回った先に見つけた知恵が役に立つことがあるかもしれない。

「やりたいことをやる」よりも「続けられることをやる」

“やりたいこと”が全くなかったとしても、逆に“やりたくないこと”がたくさんある人もいるのではないだろうか。少なくとも私はそのタイプだ。

私にはやりたくないことがたくさんある。この世で一番やりたくないことはBBQ、その次が引っ越しの荷造り。届いた荷物のダンボールを畳むのも嫌だし、エレベーターに乗り込む時の複雑な気の遣い方も苦手。重たいCSVファイルもあまり触りたくないし、ローカルなマナーも忘れやすい。なにより上下関係が厳しい人付き合いにどうしても馴染めない。

全ての仕事には必ずなにかしらの “やりたくないこと” が含まれる。だからこそ、その中でも特に“どうしてもやりたくないこと”から自分の仕事を考えてみてもいいはずである。

自分のやりたくないことを仕事選びに生かす方法にはいくつかあると思うが、まずはシンプルに、自分がどうしても避けたいことを洗い出す。それらの要素を排除してから仕事を選ぶのもいい。私の場合は、上下関係の厳しい環境が苦手だと分かっていたので、フラットな関係性を築きやすい業界に就職したりフリーランスになったりしている。やりたくないことが少ない人生は最高だ。

私にとって好きな仕事とは、「その仕事のためなら “やりたくないこと”ですら引き受けられること」でもある。

唯一、文章を書くことだけは続けられているしずっとモチベーションもあるのだが、書くことのためなら睡眠時間を削れるし、誰かからのフィードバックもありがたく受け取れる。何のためにやりたくないことをやるのかで、自分のやりたいことが分かったりするものだ。心の底から「やりたい!」と思えることを探り出すのは難しいが、苦手なことを乗り越えながら続けられていることなら探しやすい人もいるかもしれない。

高いテンションで「やりたい!」と思い続けられるものを探すのは難しい。だけど、嫌なことを乗り越えてでも「続けたい」と思えているものなら見つけやすいかもしれない。継続は力なり。「やりたいこと」よりも「続けられていること」を仕事にするのは、気力や胆力に自信がなくてもハードルが低いのでオススメだ。

人生のフェーズに合わせて、得意・不得意を振り返る

もうひとつ、仕事選びにおける定番の基準といえば “得意・不得意” だろう。その仕事が得意か不得意かということは、毎日のコンディションにかなり影響する。私はそれを、最近ようやく分かりはじめた。

若い頃、私は不器用にも “あえて不得意なことをやろう”と思うタイプだった。

よく言えばストイック、悪く言えば自信家で傲慢だったのだと思う。

せっかく学業や仕事に取り組むなら、できないことをできるようにするために時間を使おうと思っていたのだ。だからこそ、ゼミ選びなどでファイナンスなど苦手な科目を選んできたが、私の努力不足という可能性は捨てきれないものの、元々苦手なことは、人並みにできるようになっても得意なことにはならないと分かった。

苦手科目をがんばろうと思っても、そこには苦手科目を得意科目とするプロフェッショナルがおり、楽しんでやっている人たちには敵わない。

とはいえ、なんとか習得した財務系の知識は私の微かなアイデンティティにはなっているし、その知識があることが周りと比べた私の強みにもなったりする。もちろん苦手なことに一生懸命取り組む価値はある。若いうちなら教えてくれる人はたくさんいるし無理もきく。仕事の場合は、きちんと価値を出さなければならないので、苦しいのは間違いないけれど。

今は、昔一生懸命取り組んだ “苦手なこと” を少しずつやめることをはじめている。そうするとどんどん生きやすくなることに気づいた。さらに、得意なことだけやりはじめたら、人から感謝されることも増えた。

得意・不得意に着目して、仕事を選ぶなら、単純に「得意なことを仕事にしよう」だけではなく、「自分は今、得意なことをやるべきか?苦手なことに挑戦すべきか?」を人生のフェーズに照らし合わせて考えてみるのも良いかもしれない。苦手なことをやっているときは苦しいけれどそれは糧になるし、得意なことをやれば、あなたはもっと周りの役に立てる。

“不得意なことに挑戦して、自分のアイデンティティを拡張する”ことも “得意なことをさらに高める” ことも、どちらの時期もあってもいい。やりたいことで仕事を選ばなくても良い、得意なことで仕事を選ばなくてもいい。仕事選びはもっと自由になっていいのだ。

会社員生活は長い。ゆっくり快適な働き方を探そう

人生で職場を選ぶチャンスは新卒採用の一度きりではない。

私がどのような仕事をすべきか悩んでいた時、手相を見てくれた先輩が「あなたはやったことから学ぶタイプだから、色々挑戦しながら決めなさい」と言ってくれたことを今も大事に覚えている。しかしきっとそれは他の人にも当てはまるはずだ。

キラキラした仕事の裏に隠れている泥臭いつらさは、やってみないと分からない。言語化できないタスクが実は得意だということも、やってみないと分からない。やりながら、得意なことを見つければいいし、反対に得意なことじゃないなら逃げても良い。私も少しずつ、より自分が快適に、そして周りの人に貢献できる働き方を模索している。

「やりたい仕事」を見つけようとすると、ついついがんばったり意気込んだりしてしまうけれど、私達は365日24時間がんばれるほど強くない。時には「やりたくないこと」「得意なこと」から毎日やる仕事について考えて、快適な人生を手に入れようとする時期も必要だ。

何事も、やってみないと分からない。人生は長く、会社員人生は更に長くなっている。攻めたり逃げたり、「やりたい事」を探してみたり忘れてみたり、実験を重ねながら長い会社員人生を楽しもう。

文/りょかち(ryokachii)

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この記事をかいた人

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発・コンテンツマーケティングに従事。現在では、若者やインターネット文化についてのコラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作のほか、若年層に向けた企業のPR支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。