“いい質問”をするなら、アドベンチャーゲームをクリアする勇者のように

質問力

「いい質問をして、仕事を前進させたい」そう考えるものの、“いい質問”って結局なんなんだろう――そう感じている方も多いはず。一緒に働く人たちにとって有益な情報を引き出して、感謝されるような質問力ってどうすれば身に付くのでしょうか。コラムニストであり、コンテンツプランナーのりょかちさんは自身の経験から、重要なのは「相手の回答をどれだけ想定できているか」だと言います。仮説を持って相手の時間をもらうこと、下調べをした上で繰り出される質問がどれけ効果を発揮するのかを綴っていただきました。

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仕事を進めることが上手な人は、質問が上手


新卒の頃、自分が一番鍛えられたスキルは何かと聞かれたら、“質問力”と答えるだろう。

仕事をする中で、いまだに何度も頭の片隅をよぎるのも、質問力について言われてきたことだ。

質問力はなにも、 “悩みについて誰かに質問してアドバイスをもらう” ときや “大勢の前で誰も思いつかなかったような鋭い質問をする” ときにだけ使うわけではない。意見が異なるときに相手の考えていることを聞き出すのも質問力だし、プロジェクトを進める際に不明瞭になっている部分を明らかにしてスムーズに進行していくためにも質問力は不可欠である。

目標を達成するために、自分にとって分からないことを手際よく明らかにしていく。質問が上手な人は、仕事を進めるのが上手だ。仕事を進めるにあたって必要になるベーシックなスキル。それが質問力なのではないだろうか。

使い道もないのに呼び出された回答は、即刻ゴミ箱行きなのに


質問力について重要となる考え方を伝えるならば、良い質問をしたいとき、考えるのは、質問の文言ではなく、 “相手の回答”だということだろうか。一言で表すならば、質問力を高めるために必要なのは、 “回答の想定力”だと思うのだ。

つまり、相手の回答に仮説を持つことだとも言える。

こんな記事を書いているが、私も好奇心が強く、すぐに思ったことを口に出しがちなので、話しているうちに疑問に思ったことはすぐに質問してしまう癖がある。仮説を持たないカジュアルな質問も、相手のことをよく知るためにしている会話なら相互理解にいささか役立つこともある。しかし、仕事上の会話や、解決したい悩みがあって相手に時間をもらっている場合の会話では、悪い癖にもなるので気をつけている。

相手の回答にあらかじめ仮説を持っておき、それが今進めている案件の役に立つ情報なのか、ちゃんと自分が聞きたかったことは回答として聞けていそうかを判断してから質問しなければ、相手の貴重な業務時間を無益に奪ってしまう。

「それを聞いてどうするの?」

質問力がない人がよく言われる回答だ。私も新卒の頃、よく言われたせりふだが、これこそ、質問力がない人に“相手の回答を想定する力”がないから言われる言葉なのである。

返ってきた回答が次のアクションにつながらないものだったとき、せっかく相手の時間と思考を使ってもらったのにも関わらず、それを私達はゴミ箱に突っ込まなければならない――そうして手元に残るものが少なかった会話を、人は「実のない会話」というのだろう。実のない会話を生み出しているのは、質問に答えている人だけではない。使い道のない回答を引き出している質問者のせいでもあるのだ。

“質問と回答への仮説はセットで存在すべき”。

これは私が常々頭の中でリフレインさせている言葉である。

質問のやり取りがグダるのは、下調べが足りないから


質問力のない人がよく陥るもう典型的なケースは、とにかく質問が長引くことだ。

会話の濃度を下げる長引き方のパターンはふたつあると思う。

ひとつは、自分の本当に聞きたいことが分からずに、とにかく回答が出てきそうな質問を次々するパターン。これはまるで、目の前にある引き出しをやたらめったらあけているような感じだ。

もうひとつが、前提条件を相手に伝えてなくて何度も答え直さないといけないパターン。例えば、「こちらの新刊についてコメントいただけますか?」と言われて、一生懸命2000字の文章を書いたら、「すみません、150字ほどでお願いします」というようなもの。回答形式に制限があるなら最初から言っといてよ、というやつである。

これらは両方、自分がしようとしている質問について下調べができていないときにしばしば起こる。自分が聞きたいことについてある程度自分で考えてみるための調べ物はもちろん、想定した回答の使い道について、どのように活用しそうかということに対する下調べについても足りていないのだ。

下調べは質問の解像度をあげる。そして、解像度の高い質問は、解像度の高い回答を呼ぶ。「このデザイン部分は、どうして赤色なんですか?」よりも、「ここのメインコンセプトカラーは緑だと過去におっしゃってましたが、どうしてここだけ赤なんですか?」と聞いたほうが、多くの質問をせずともひとつ目の質問で詳しい話を聞けるだろう。

そして、質問について下調べをして、回答を予測し、その使い道を想像するほど、必要な質問が分かってくる。例えば、先程の回答の使い道が、デザインというアウトプットではなく、デザイナー自身の考え方について聞きたい場合には「ここのボタンは他のコンセプトカラーと異なる赤色ですよね。こういった常識を裏切るデザインをこれまでも好まれてきたと思うのですが、それはどのような考えからですか?」と聞いたほうがいいだろうか、と考えたりできるわけである。これも、最初から使える質問だけをすることにつながる。

こういった考え方は、さまざまなシーンで大切になってくる。「なぜ、買取価格がこんなに安いんですか?」と聞くよりも、「前年は今回の見積もりよりも15%高い値段で買い取っていただきましたが、この差分の15%はどこから生まれていますか?」と聞くほうが、今自分がぶち当たっている課題の詳細に気付くことができる。
「買取金額が前年よりも15%減ってしまう代わりに、二倍の量を購入いただくことは可能ですか?」と追加の質問ができるのは、その回答の使い道として量を増やす選択肢があるということを想定できているからだ。

自分の中に仮説がなければ、質問は曖昧なまま終わり、気付いたあとで「あれも聞いておけばよかった」となる。

私がしばしば教えられたのは、「相手に何かを聞くときは、必要のない選択肢はあらかじめ取り除いてあげて」というものだった。

150文字という枠の中で書いてほしいこと。
今はデザインの意図について聞いていること。
買取価格の低下理由ではなく、買取価格を改善するための話をしたいこと。

質問された方は、自由に考えているように思えて、質問者が決めた枠の中で思考を巡らせている。だからこそ、質問をする人はどの枠組みで考えれば良いのかを明確に伝えるのが仕事なのである。それができていないと、質問のやり取りは、お互いが必要な回答を手に入れるまでに長い長い道のりをたどることになる。そして、不必要な選択肢を取り除き、どのような枠組みで考えることができるのかをあらかじめ決めておいて、最短で必要な回答にたどり着くためには、きちんとした下調べが必要だということなのだ。

質問はアドベンチャーゲーム。調査と戦略で攻略せよ


誰かに質問をし、答えをもらって仕事進めるというのは、アドベンチャーゲームに似ている。

回答をもらってたどり着きたい状態をゴールとすれば、その入り組んだ道筋を乗り越えるためのアドバイスは、難局を切り抜けるためのアイテムだ。

何のために使うのか決まってないのにアイテムをもらっても、鞄の容量を消費するだけだし、アイテムをもらうための手順をある程度分かっていなければ、無駄足が増えるに決まっている。

自分が抱える課題を誰かに質問することで解決しようとするのは、時間の短縮に思えて時間の無駄になることも多い。誰かの力を借りるにも、最低限、相手から奪う時間を最小限にする調査と戦略が必要なのである。

一方で、質問を通して、誰かと一緒に素晴らしい回答にたどり着くのは楽しい。それが、順調な足取りで進むなら尚更だ。

アドベンチャーゲームは往々にして、最初にゴールしたものが勇者となるが、現実でも、無駄なく周りを気持ちよく協力させながら自分の目標を達成する人は勇者のごとく讃えられるものである。

私もまだまだ、適切な質問をするスキルを高めなければならないと感じているが、ゴールまでの道筋を緻密に計算して、答え合わせをするようにアイテム獲得もアドベンチャーゲーム自体も攻略できる勇者になることを、日々諦めずに闘っていきたい。

文/りょかち(ryokachii)

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この記事をかいた人

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発・コンテンツマーケティングに従事。現在では、若者やインターネット文化についてのコラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作のほか、若年層に向けた企業のPR支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、朝日新聞、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。