私たちが、商品・サービスを購入してもらうための有効なマーケティング施策を行うには、顧客の「購買心理」に対する理解が欠かせません。
「購買心理を理解する」というと、心理学の話と思われるかもしれませんが、実は簡単なフレームワークに当てはめることで、購買心理を理解することができ、有効なマーケティング施策を打てるようになります。
この記事では、そんな顧客の購買心理を理解する上で有効な、3つのフレームワークについてご紹介します。
購買心理を理解する意味
消費者の購買心理を知り、理解した上でマーケティンス施策を打つことで、自社の商品・サービスの売上を向上させることができます。
自社の商品・サービスの購入者は、どのように商品・サービスを知り、どのような過程を経て欲しいと思い、実際手に入れているのでしょうか。
おそらくその詳細を、明確に説明できる人は少ないでしょう。
しかし、マーケターがこの商品・サービスの認知から購入までのプロセスを知ることで、プロセスの各段階で適切なマーケティング施策の実施が可能となり、売上をより向上させることができます。
例えば、女性用シャンプーの売上向上を図ろうとすると、数ある競合の中で、まず商品名を知ってもらう必要があります。
商品名を知ってもらった後は、競合商品とどこが違うのかや、使用メリットなどを見込み客に理解してもらう必要があります。そして、実際に購入していただくためのきっかけを作り、実際初回に購入していただいた後は、継続購入してもらえるように、クーポン施策や類似商品のクロスセルなどで、全体的な売り上げの増加を図ります。
このプロセスを見間違えると、効果のない見当違いな施策を行うことになります。新商品の発売当初、商品名を誰も知らない段階で、Webサイト上でリッチコンテンツを使って商品性を訴求しても、検索もされずコンテンツは誰も目にも触れません。店頭で価格を安くしても、いきなり大きな売上にはつながらないでしょう。
マーケティングの世界では、この消費者の購買心理を分析し、そのプロセスを明らかにすることをずっと研究してきています。当然、時代が変われば消費者の購買心理も変化するので、現在は消費者の購買心理を分析する多様な考え方があります。
以降では、現在マーケティングの世界で購買心理の分析に使われている3つの手法についてお伝えします。
購買心理を理解するための3つのフレームワーク
消費者の購買心理の理解において使える、「AIDMA」「AISAS」「マインドフロー」というフレームワークをご紹介します。
認知~購買までの5つのフロー「AIDMA」
まずは「AIDMA」です。「AIDMA」は1920年代にアメリカで提唱されたフレームワークです。70年以上の長きにわたり消費者の行動を表すモデルとして今も活用されています。
「AIDMA」は、消費者の認知から購買までを5つの段階に分けたものです。ユーザーの商品購入までのモチベーションが「Attention(認知)」→「Interest(興味)」→「Desire(欲求)」→「Memori(記憶)」→「Action(行動)」のどの段階にあるかを見極め施策を実施することで、各段階のユーザーと最適なコミュニケーションを図ることができ、購買につなげることができます。
以下では、各段階を詳細に説明します。
「Attention(認知)」
「Attention(認知)」とは、商品・サービスの存在のみを知っている段階となります。この段階では、まだ商品・サービスを購入したいとも思っていないどころか、興味も持っていません。興
味をもってもらうには次の段階「Interest(興味)」に進む必要があります。テレビCMなどのマス広告やWeb上のバナー広告や記事広告、プレスリリースなどが大量の露出し、消費者が商品・サービスを知り、少しでも興味をもってもらうことが重要になってきます。
「Interest(興味)」
「Interest(興味)」とは、消費者が商品・サービスに興味を持った状態を指します。
テレビCMなどのマス広告やWeb上での情報露出で商品を認知したユーザーが、どんな商品か気になって調べている状態です。
この状態の消費者にはリスティング広告などでWebサイトに誘導したり、インフルエンサーがInstagramやTwitterに投稿された使用感などのレビュー記事が次の段階への後押しとなります。
「Desire(欲求)」
「Desire(欲求)」とは、消費者が商品・サービスの購入を検討している状態です。
この段階の消費者は、メーカーからの商品・サービスの情報を知った上で欲しいと思い、さらに調べるために、資料請求を行ったり、無料お試しサンプルなどを取り寄せたりします。
そしてその資料を見たり、サンプルを試しに使ってみたりして、商品購入に向けてさらに想いを強めます。
「Memori(記憶)」
「Memori(記憶)」とは、消費者が商品・サービス欲しいと思い、記憶にとどめている状態です。
消費者は商品・サービスを欲しいと思っても、すぐ購入するわけではなく、他社の商品を比較検討したり、今は必要ないと先延ばしにしたりします。
このような時、Web上でリターゲティング広告を実施したり、資料請求時に登録したメールアドレスにメールマガジンを送ったりし、欲しいという思いをもう一度呼び起こし、再度購入検討してもらいます。
「Action(行動)」
「Action(行動)」は消費者が商品・サービスの購入に至る状態です。
購入を決意した消費者に、スムーズに自社の商品・サービスを購入してもらえるように、施策を実施することになります。
店頭で目立つ位置に商品を陳列したり、ECサイトで商品購入ができる状態にしておくなどの施策が有効です。「AIDMA」はここまでの購入段階を表しています。
SNSでの共有まで視野に入れた「AISAS」
さて、「AIDMA」とよく似ていますが、「AISAS」もよく使われるフレームワークです。
「AISAS」は2005年6月に電通が商標登録し提唱したもので、消費者の購買行動を「Attention(認知・注意)」→「Interest(興味・関心)」→「Search(検索)」・「Action(行動)」・「Share(共有)」で表しています。
AISASではAIDMAの考え方にはなかった、インターネット上での「Search(検索)」や「Share(共有)」が組み込まれ、AIDMAより、現在の消費者の行動に近しいモデルとなっています。
「Attention(注意)」
AIDMAと同じくAISASも「Attention(認知)」から始まります。なお、認知する経路はAIDMAの時代に比べると多様化しており、TVなどのマス媒体のほか、Web上のメディアやSNSなどでも知るきっかけとなります。
また、類似商品を探しているユーザーにもレビューサイトや比較サイトなどで認知させることもできます。認知チャネルが多様化しているため、認知施策においても、どのメディアを選び、そのメディアではどんなユーザーがどう見ているのか、をきちんと把握する必要があります。
「Interest(関心)」
次の「Interest(興味)」の段階も、AIDMAモデルと変わりません。
他の競合商品と差別化がされメリットを魅力に感じたり、著名なタレントを使った面白い企画があったりするなど、プロモーション自体が魅力的なものであると、消費者に興味を持たれます。
「Search(検索)」
「Search(検索)」はAIDMAとは違う、AISASならではの段階です。
商品・サービスに興味を持った消費者は、検索エンジンやSNSで商品・サービスを検索し、より詳細に調べたり、競合商品と比較検討を行います。
「Search(検索)」をするときのユーザーの気持ちは、AIDMAの「Desire(欲求)」であった「欲しい」とは、明らかに違うモチベーションとなりますが、ここで有益な情報を提供し魅力的に思ってもらえると、一気に購入の段階に進むことができます。
「Action(行動)」
「Action(行動)」はAIDMAと同じく消費者が商品・サービスを購入する段階を指します。
AIMDA同様に、商品・サービスの入手方法をなるべく簡単にすることで、購入を促進することができます。
「Share(共有)」
AISASは「Action(行動)」が終わりではありません。「Share(共有)」の段階、すなわち、商品の使用感をSNSやレビューサイトに投稿するという段階があります。
このレビューが「Attention(認知)」や「Attention(注意)」「Search(検索)」にも大きな影響を与えています。SNSやレビューサイトで良い評判が多く投稿されていれば、見込ユーザーの商品購入を後押しすることにつながります。
逆に悪い評判やあまりレビューがなければ、見込みユーザーが不安がり商品購入への意欲を下げることになります。インターネットが出てきたことにより、「Action」後の消費者行動を考えた施策が重要となっています。
購買心理の7段階「マインドフロー」
マインドフローとは、消費者の購買心理を分析するフレームワークですが、商品購入時点で終わる「AIDMA」や商品購入直後の「Shere」で終わる「AISAS」よりもさらに進み、商品のファン化まで考慮したモデルとなっています。
マインドフローは、消費者の購買行動を「認知」→「興味」→「行動」→「比較」→「購買」→「利用」→「愛情」という7つの段階に分けています。
「マインドフロー」のポイントは購買した後利用し、その後愛情を持って利用し続けてくれるか、というところにあります。
例えば、EC通販などに当てはめると、ユーザーが初回購入後愛情を持って利用し続けてくれるとリピート購入をしてくれるので、売上=LTV(LIFE TIME VALUE)が最大化します。このように商品・サービスの認知からLTVの最大化までを範囲にしているのがマインドフローです。以下では、マインドフローの各段階について説明します。
関連記事:「LTV」とは?計算方法から改善策を学んで顧客価値を最大化
1段階目-「認知」
マインドフローにおける「認知」の状態とは、商品・サービスの名前は知っているが、興味は持っていない状態を指します。
この段階では、商品・サービスに興味をもってもらう施策が重要となってきます。
施策を考える上では、「どんなお客様に来てもらいたいか」を規定することが重要です。
むやみやたらにユーザーを集客したところで、最終的なリピート購入にはつながらないので、ペルソナ分析などで集客したいユーザー像を、あらかじめ明らかにしておきましょう。
2段階目-「興味」
「興味」の状態とは、商品・サービスに興味を持ってもらっているが、実際の行動にはつながっていない、という状態です。
この段階では、行動に移してもらうための施策が重要となってきます。
ターゲットに向けた魅力的なキャッチコピーや「●●が欲しい人必見!」など、購入してもらいたいペルソナに向けた具体的なメッセージ訴求で興味を惹き、次の行動へ移してもらうよう施策を打ちます。
3段階目-「行動」
「行動」の状態とは、実際に商品を購入するための情報収集を積極的に行っている状態を指します。
商品・サービスの紹介ページを何度も見たり、資料を請求したりして、興味をもった商品。サービスをより深く知ろうとしています。
そのため、詳細ページや資料の中の情報をより分かりやすくし、理解を促進させることが有効とされています。
4段階目-「比較」
「比較」の状態とは、文字通り、消費者が他社の競合商品と比較して、購入検討している段階です。
実際に商品・サービスの初回購入につながるかどうかの重要なポイントです。
価格メリットはもちろん、送料や購入後のサポートまで、競合商品と違うメリットを訴求して、消費者を自社の商品・サービスの購入決定まで導きます。
5段階目-「購買」
「購買」の状態とは、商品を購入した状態を指します。購入に至るには購入方法はなるべく簡単にしハードルを下げる必要があります。
ECサイトであれば、決済方法にクレジットカードを導入したり、購入フォームの記載事項を少なくしたりします。購入の最終段階で手続きが面倒だとユーザーは簡単に離脱してしまうので、慎重に導線や手続きフローを検討する必要があります。
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6段階目-「利用」
「利用」の状態とは、商品購入後の利用を指します。
なぜ「利用」まで分析の範疇に加えるかというと、最後の「愛情」まで到達させるには、きちんと購入した商品を使ってもらい、その商品の利用価値を感じていただく必要があるためです。
そのため、商品に付属するわかりやすい説明書や使用イメージを伝える動画なども、ユーザーの満足を高め「愛情」を持って使ってもらうための重要な施策と言えます。
7段階目-「愛情」
マインドフローの最後の段階である「愛情」の状態とは「商品やサービスをまた使いたい」と思っている状態です。
この状態に持っていくために、会員化による継続的な情報発信や継続購入で使えるクーポンの配布、迅速なアフターフォローなどが重要です。
この施策が成功すると、購入者はリピーターとなり、継続的に商品・サービスを利用してくれる重要な顧客となります。
マインドフローとは見込み客を顧客にする過程を表すものです。ぜひ自社の商品・サービスの販売の分析に活かして、売上の向上を目指してみましょう。
購買心理を理解して売上アップ
今回紹介した「AIDMA」「AISAS」「マインドマップ」は、いずれも消費者の行動を理解する上で重要なフレームワークです。
自社の販促施策をこれらのフレームワークに落とし込んで検証すると、無駄な施策や足りない施策も可視化しやすくなります。ぜひ参考にしてみてください。