新規サービスや新しい商品を企画する時など、様々な場面で利用される「ブレスト(ブレインストーミング)」という会議方法。
また、ブレストは新しいアイデアを思いつくための企画立案だけでなく、問題解決の場面でも活躍する手法です。最近では、当たり前のように多くの企業で導入されるようになりましたが、一部の方々の中では「効果がない」「非効率である」という意見もみかけます。
ただしこれは、ブレストの基本のルールを守っていなかったり、ブレストの進め方自体が間違っている可能性が大いにあります。ブレストは、方法さえ間違わなければアイデアを出すための非常に有効な手段となります。
今回は、そんな便利な会議手法を失敗させないため、ブレストの意味、効果、ルール、進め方などを中心に説明していきます。(ルールや進め方をいち早く知りたいという方は3章、4章まで飛ばして読んでみてください)
ブレストの意味
そもそもブレストとは、ブレインストーミング(Brain Storming:BS法)の略で、「アイデアの神様」という異名を持つアレックス・F・オズボーン氏が1938年に発案した、複数人(少数)で行えるアイデアを出すための会議手法です。
脳(Brain)が集合しアイデアの嵐(Storming)を起こすかのように、集団で大量のアイデアを出し合うという意味合いからその名前が名付けられました。
メンバーの考え方や得意なジャンルが異なるために、相乗効果をおこしてたくさんのユニークなアイデアを生み出そうという集団的思考法。このことをブレストといいます。
ブレストをすることでもたらされる効果
では、ブレストにはどのような効果があるのでしょうか。
ブレストをすることで、思いも寄らないアイデアが出るのを期待することができます。一集団で大量のアイデアを出し合うことにより、他人の考えが共有され、連鎖反応を起こすからです。
例えば、ブレストはコンサルティングファームや企業の経営企画室でもよく使われています。クライアントの経営課題を解決するにはどういうマーケティング手法を使えばいいのかという議題を4~5人のチームでブレストして考え出したり、新規事業で使えそうなアイデアを少人数のグループでそれぞれ出したります。
ブレストをすることで、一人では絶対に思いつかなかったようなアイデア、考えを生み出すことができます。またブレストは一人で考えるよりも格段に早く、いいアイデアを出すことができます。
ブレストを行う人により様々な独自ルールが追加されたりしていますが、今回はそもそものベースとなるブレストの「基本」をご紹介します。
ブレストのルール(4原則)
続いて、ブレストを行う際に守るべき4つのルールをご紹介します。この4つの原則を守らなければ、うまくいくはずだったアイデア出しも失敗に終わる可能性があるので注意しましょう。
1.批判はしない
1番最初に、ブレストをする上で1番重要なことをお伝えします。
それが、ブレストの最中にはメンバーのアイデアや意見を「批判」してはないことです。批判がでる会議だと、良いアイデアがでにくくなってしまうからです。
たとえば、すごくお金のかかるアイデアを他のメンバーが提案したとします。それを聞いて、「そのアイデアでは予算が足りないよ」と批判したくもなりますが、その思いをグッとこらえて、自問しながら「予算が足りない場合の対応策」を考えて発言するように心がけましょう。小さくしたり、費用のかからない材料におきかえたり。
ブレストにおいてアイデアを批判する行為は禁止ですが、別の視点から見て広げることは歓迎されます。一見無謀に見えるアイデアを、別の視点からとらえる癖をつけましょう。
2.たいしたことのなさそうなアイデアも歓迎する(自由奔放)
奇抜で斬新なアイデアや、議題とは一見関係のないように思える意見でも、メンバー間で受け入れる雰囲気を作ることが大切です。
発言する側も「こんなアイデアなんの役にたつんだろう?」と発言に躊躇せず、「笑われてもいい!」というぐらいの勢いでアイデアをバンバン出していきましょう。
自由奔放なアイデアであればあるほど、普段は思いもつかないような新しい企画の種になる可能性が高いのです。ライト兄弟やエジソンのアイデアも、最初は笑われるような小さなアイデアから始まっています。そういった笑われるようなアイデアこそが重視される会議にしましょう。
3.質より量を重視
ブレストでは基本中の基本ですが、質の高いアイデアを出すよりも「量」を重視することを意識することが大切です。「質」にこだわりすぎると、自由で斬新なアイデアを制約してしまうことになりかねません。
質より量を重視するため、思いつくアイデアの中には、実現不可能に思えるアイデアもたくさんでてくるかと思います。どんなに粗悪なアイデアでも、どんなに面白くないアイデアでも問題ありません。まずは「量」にこだわり、思いついたものはどんどんアイデアを出していきましょう。量にこだわることにより、最終的には「アイデアの質」自体を高めることにつながります。
4.アイデアを連想、結合し便乗する
上記のルールを守ると、たくさんのアイデアを出るようになります。そのアイデアの質を高めるために、そのアイデアを組み合わせたり、部分的にを変えることによって、全く違った新たなアイデアが誕生します。
他のメンバーが出したアイデアに、新しい視点を付け加えることができればブレストはほとんど成功したようなもの。どれだけ他のメンバーが出したアイデアに「のっかれるか」。これこそが「ブレスト」の成功の法則だといっても過言ではありません。
以上、「批判はしない」「自由奔放」「質より量を重視」「時間を厳守する」の4つのルールを守りブレーンストーミングを行ってください。
もしこの原則を守れない人がメンバー内にいると、ブレスト自体が上手くいかない可能性がでてきます。あらかじめこのブレストのルールを徹底するように、メンバー間で情報を共有しておきましょう。
ブレストの進め方5STEP
ではいよいよブレストの仕方を5STEPに分けて解説していきます。
[STEP1]ファシリテイターを決める
まずはファシリテイターを決めましょう。
ファシリテイターはブレストを進めるリーダーです。
ブレストをしているとどうしても批判的な意見が出てきたり、アイデアを発言するのを躊躇したりする人も中には出てきます。どんなアイデアでも歓迎されるような空気作りをすることがファシリテイターにとっても大事なことになります。
[STEP2]メンバーを選定する
ファシリテイターが決まったら、次にブレスト会議に参加するメンバーを決めましょう。ブレスト会議に最適な人数は3〜10人程度が適切だと言われています。ここで大事なのが、ブレストのメンバーに同じような属性、考えを持つ人を二人以上参加させないことです。
例えば、ある企業が新規事業立ち上げのためのブレスト会議をするとき、経営幹部など会社の上のポジションにいる人だけで行うのではなく、年齢、部署、性別、経験、ポジションなど、ごちゃ混ぜにして選ぶようにしましょう。
同質の考えを持つ人が集まってしまっては、同じようなアイデアが集まり、相乗効果を生むことが難しくなってきます。そのため、なるべく違う背景を持つ人を集めることをお勧めします。
[STEP3]ブレストの目的を決める
次のステップはブレストの目的を明確化することです。
ブレストを行う前に、「何」について話す会議なのかという明確な目標をファシリテイターを中心に決めましょう。ブレストを行うことによって得るべき「目的」を明らかにすることにより、クリエイティブなアイデアを出しやすくします。
上記でも記載しましたが、ブレストは質より量を重視するので、明確なゴールが設定されていないと、ただの言葉遊びで会議自体が終了してしまうこともあります。
ファシリテーターが「この会議の目的」を明確にしメンバーに事前に伝えることにより、質の高い会議に変えることができます。
[STEP4]時間を厳守し、アイデアを出す
いよいよブレストを初めていきます。
ファシリテイターは先ほど記述したルールと時間を厳格にまもり、会議を進めていってください。
ここでポジションなどの違いによって意見をなかなか言い出せない人もいるため、ファシリテイターは積極的にアイデアを人にふって聞いていきましょう。
会議の質、結果は全てファシリテイターにかかっているといっても過言ではありません。
[STEP5]アイデアをまとめる
時間がいっぱいになったら最後に出てきたアイデアをまとめましょう。
他のメンバーが出したアイデアに、新しい視点を付け加えることができればブレストはほとんど成功したようなものです。どれだけメンバーが出したアイデアとアイデアをくっつけることができるか。これこそが「ブレスト」の成功の法則だといっても過言ではありません。
しっかりと会議で出てきたアイデアをまとめてブレスト会議を締めくくりましょう。
以上がブレストを実際に行う5つのステップです。
上記の通りにすればいいアイデアをブレスト会議で出すことができるでしょう。
追記:ブレストで議論できるテーマ
上記の方法でブレストを行っていてもうまく行かない場合も存在します。
もちろん進行方向やルールが伴っていない可能性もありますが、ルール通りに進行してもうまく行かない場合は「テーマ」自体がブレストに向いていない可能性があります。
ブレストに向いているテーマ
- アイデア出し
- 問題解決の討論会
今までになかった新しい取り組みを考える時や、何かすでに問題が出ていて、その解決策を探す時に向いています。
自分だけであったり少人数では考えが固執してしまい、少ないアイデアでしか問題解決を行うことができません。
出し合ったアイデアどうしを融合して新しいアイデアが浮かんできたり新たな課題が浮かび上がったりと、相互作用を及ぼして良い流れに向かいやすくなります。
ブレストに向かいないテーマ
- 定例会議
- 承認会議
- 意思決定を行う会議
定例会議などただただ物事を報告し、時間が決められている会議には向いていません。そもそも議論をする会議でもありませんし、報告できる時間は決まっているため時間の無駄になってしまいます。
また、意思決定を行う会議は、ブレストを行っても「事前に行ってから会議にもってこい」と印象を悪くする場合が多いです。
上司や取引先にブレストが必要な要綱を指摘されてまった場合は持ち帰ってからブレストを行った方が無難です。
ブレストのルールと進め方のまとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、ブレストの基本である「ルール」と「進め方」を中心にお伝えしました。このブレストの基本さえ押さえておけば、新規アイデアや斬新な解決策を生み出すことができます。
上記のルールを守りながら、いいアイデアが出ることを願っています。
上記のルールを守りながら、楽しいブレストライフを送りましょう。