「なぜバズった?」「どう話題だった?」ネットで評判になった広告を解明してみよう

TwitterやFacebookなどのSNSを見ていると、広告で使われていた言葉や広告のビジュアルがタイムラインに流れてくることがありませんか?

いわゆる“バズっている”広告たち。では、何故その広告はバズっているのか?もしくは、話題になっているのか?覚えられているのか?

いくつかの広告を参考に、広告が掲載されたときの時代背景や、何を目的として展開されていたのか、どういう効果があったのかなどを、考えてみます。

「誰かに言いたくなる・シェアしたくなる広告」

最近は気になるものを見かけるとTwitterやinstagram、Facebookで「シェアする」のが主流ですよね。つまり、見たときのインパクトが大きいほど、拡散されやすい(バズりやすい)傾向にあります。その一例が、こちら。

パスワード 〜もっと強くキミを守りたい〜

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出典:ipa.go.jp

これはIPA情報処理推進機構が、10代におけるパスワードに対する意識が低いことを受け、セキュリティの意識を向上してもらうために制作した看板広告です。2015年の4月から設置されたのはJR原宿駅の大型ボードにて設置。看板やチラシでのみの掲示でしたが、ネットなどで見かけた方も多いのでは?

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出典:ipa.go.jp

全体の世界感を少女漫画風に見立てたこちらの広告シリーズ。「パスワード」や「伝えたいこと(パスワードの内容をもっと強化しよう)」を、少女漫画のセリフになぞらえながら表現。「10代」というターゲットに刺さりやすい漫画風にすることで、強烈なインパクトを与えています。掲示した結果、ネットでも多くの反響があり、「わざわざ見に来た」という人もいたほど。10代のみならず、インターネットを使う幅広い世代に影響を与えていました。

全シリーズはコチラ→「パスワード

ネットでの反応

大勢の人に投稿、シェアされています。いわゆる“バズる”だけで商品購入に至るとは限りませんが、認知度が高まるのは事実。このパスワードの看板では商品購入が目的ではなく、“パスワードを単純なものにしてはいけません”というメッセージを伝えることを重要視しているので、大正解の結果になっということです。

東京メトロ新宿駅構内「だきつきプリン」

「写真を撮りたくなる」という点では、こんな立体広告もネットで拡散されていました。
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年誕生20周年を迎え、「2015年サンリオキャラクター大賞」で1位に輝いた人気キャラクター「ポムポムプリン」。アニバーサリーキャンペーンの一環として、新宿駅の通路の一部をハイジャック!

キャラクターが広告設置のお知らせをツイートすることで、ファンが現地を訪れて写真撮影する現象が数多く見られました。

ネットでの反応

このキャンペーンで重要なのは「ポムポムプリンが20周年を迎えたよ!」「サンリオキャラクター大賞1位のプリンです!」という認知度を広めること。たくさんの人がわざわざ立ち寄ってプリンに抱きついた写真を撮影し、SNSでシェア&拡散していたため、こちらも目的が達成されているということです。立体広告は実際に販売している商品とは関係がありませんが、知名度を上げることで、結果的にファンを増やし、商品購入に結びつくわけですね。

「ターゲットをオトせる人物を起用する」

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出典:adgang.jp

JRSKISKIの広告。この広告のターゲットは10〜20代の若者です。

本田翼さんを起用したことから特に話題になったこの広告シリーズ。このサイトによると、本田翼さんは当時、TVに出演すると1万件近くツイートされることもあったそうです。さらに、TVCMで起用されたのは当時、若者の間で大人気だった「GReeeeN」。駅ポースターにはGReeeeNのおなじみのロゴも表示されていました。

音楽×モデル。そのどちらもターゲットに人気があるもの。若者の興味を強く惹きつけるのは言うまでもありません。

スキーに行かない若者が「本田翼ちゃんが可愛い!」「あのスキーの広告のやつ!」などと会話する…それまでスキーに興味がなかったターゲットが、「スキー」という言葉を口にするだけでも、大きな効果があると言えます。

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出典:adgang.jp

その翌年に起用された広告がこちら。「ゲレンデに来ると、恋が芽生えるかも…」そんな青春シーンを彷彿とさせる「ぜんぶ雪のせいだ」というコピーもインパクト抜群。さらには、テーマソングである「SEKAI NO OWARI」のこの人も…。

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出典:adgang.jp

川口春奈さんと連動したビジュアル広告を打ち出すことで、「あのピエロはなんだ!」という声が多数。また、当時、関東地方ではポスター掲示時期に大雪が降ってJRの運行が大幅に遅れたこともあり、「ぜんぶ雪のせいだ」というワードがネットで非常に多く使われていました。

ネットでの反応

日常生活で「ぜんぶ雪のせいだ」が使われるように。ゲレンデで写真を撮影し、「ぜんぶ雪のせいだ」と共に投稿する人も大勢しました。

話題になればなるほど、モデルさんをTVで見かける度に、テーマソングやアーティストの曲を耳にするだけで、「JRSKISKI」の広告を思い出す。それは「スキーに行かない人にもっとスキーを楽しんでもらいたい」という狙い通りの効果ですね。

「誰もが知っている言葉を使って覚えてもらう」

宝島社

こちらは2011年9月2日に新聞の見開き広告として掲載され、数々の広告賞も受賞しています。

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出典:tkj.jp

「いい国つくろう、何度でも」

大抵の大人が耳にしたことがある「いい国(1192)つくろう、鎌倉幕府」という、歴史を覚える際の語呂合わせ。(最近では、鎌倉幕府を築いたのは1185年だったとも言われているようですが)この誰もが知っている言葉を使うことで、「スグに覚えられる」という効果があります。なおかつ「鎌倉幕府」を「何度でも」とすること。つまり「知っている言葉」に、「新しさ」「裏切り」を組み合わせることで、新しい気づきが生まれるのです。

当時の社会状況

また、この広告が掲載されたのは2011年の9月2日。東日本大震災が起きた2011年3月のおよそ半年後でした。「災害や敗戦など、どんな苦境も乗り越え、国を立て直してきた日本という国。その経験を思い出して、頑張って乗り越えていこう」そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。この日は戦争終結のための調印式が行われた日でもあり、ネットなどでは賛否両論の意見があったようですが、“インパクトを与える” “勇気を与える” “読んだ人が行動を起こす”というあらゆる効果をもたらしたこの広告効果は、お見事と言えると思います。

ネットでの反応

「企業・団体イメージを向上する」

近畿大学

近大マグロ」という言葉をご存じでしょうか。関西にある「近畿大学」の水産研究所が完全養殖に成功したマグロの名称です。

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出典:kindai.ac.jp

世界で初めてクロマグロの完全養殖化に成功した近畿大学。しかしその事実だけを打ち出しても、いずれ話題は忘れ去られてしまう…。そうならないため、養殖したマグロを「近大マグロ」とブランディング化。店舗営業を開始することでメディアへの情報発信を強化。末永く続くブランドイメージへの定着化を計ったのです。

一度見たら忘れられない広告はネットでも話題になり、「あのマグロの大学ね」というイメージが定着した頃に制作された広告がこちら。
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出典:pressnet.or.jp

ボケて、ツッコむ。関西ならではのノリの良さ、ユーモアも、学校の表情がよく出ていていいですね。この広告を掲載後、やはりネットでも話題が続き、さらには国際学部新設を新設した際に制作された広告がこちら。

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出典:dentsu-ho.com

「マグロ大学」を定着させた背景があるからこそ、威力が発揮できる広告ですね。

ネットでの反応

「まずイメージを定着させる」ことからスタートした近畿大学のブランディング。広告を打つタイミングや、何をメインに打ち出すかが徹底されたことで知名度が上がり、また“何をしている大学なのか”が以前よりも明確に。結果的に入学志望者は格段に増え、入学志望者が1位となった実績もあります。長い道のりかもしれませんが、人生を左右する学校選びの際に、「この学校に入りたい」と思わせる人を増やした一連の流れは、素晴らしいと思います。

ベネッセ

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出典:sendenkaigi.com

「人は、一生育つ。」

この広告が打たれたのは、Benesseの情報漏えい事件が起きて数ヶ月が経過してから。キャッチコピーの制作者がその意図を含めたのかは定かではありません。しかし「一生育つ」という言葉には、教育事業に対する言葉だけではなく、“我々企業もまだまだ、これから成長していきます”というイメージが込められているのではないかと個人的に考えています。事件を通じて生まれてしまったマイナスイメージを少しずつ変えていけるような、とても力のある言葉だと思います。

ネットでの反応

マイナス意見もあるものの、「このコピーが好き」「励まされた」という声も多いです。何度も口にしたくなる言葉、聞けば聞くほど自分のプラスになる言葉…こうしたコピーを「企業スローガンになる=何度も目にする、耳にする」ことで、言霊のように企業のイメージが変わっていくのではないでしょうか。

最後に。

いかがでしたか。ワンキャッチ&ワンビジュアル。たったそれだけの情報しかない広告でも、実はしっかりと込められたメッセージや意味があるんです。

今回ご紹介した広告は、どれも筆者の個人的見解が含まれているため、「すべてが絶対に正しい」というわけではありません。しかし、このように「何故この広告が目に留まったのか」を考え、考察する時間はとても大切です。あなたがつい商品を購入してしまった、行動を起こしてしまった広告についてもぜひ考察してみてくださいね。