テレビでもCMが流れている格安SIMについて興味がある方も多いでしょう。
ドコモやau、ソフトバンクのキャリアの携帯と比べると通信料金が安く維持費もお得になるそうだから格安SIMに変えてしまおうと考える前に確認しておきましょう。
格安SIMはメリットばかりではありません。実はデメリットも多いのです。
デメリットをよく理解した上で賢く格安SIMを使いましょう。
格安SIMに乗り換える前に知っておくべき事
ドコモ、au、ソフトバンクのキャリアの携帯の契約から格安SIMに変更しようと思っている方はちょっと待ってください。格安SIMに乗り換える前に知っておかねければならないことがあるのです。
格安SIMってどんなものなのかをまずは解説
格安SIMはMVNOのSIMの別称で使われるようになりました。MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」の略称です。「仮想移動体通信事業者」のことで、携帯電話会社から通信回線を借り受けてSIMを提供している事業者のことを指します。そのMVNOのSIMはキャリアに比べて通信サービス料金が安いので「格安SIM」と言われています。 1ヶ月の通信料金が高速通信3GBのデータ通信プランで1,000円前後、3GBの高速通信と音声通話プランで1,600円前後と非常に安いのが特徴です。
2001年に日本で初めてのMVNOが登場しました。ここ数年通信料金の安さで注目され普及が徐々に進み、今ではいろいろなMVNOが通信サービスと格安SIMを提供しています。通信回線をMVNOに貸しているキャリアはNTTドコモが一番多いです。数は少ないですがmineoやUQ mobileなどにauも貸しています。ソフトバンクの回線を借り受けて格安SIMを提供するMVNOは最近までなかったのですが、現在はソフトバンク回線の格安SIMも登場したのでNTTドコモ,au,ソフトバンク 各社の格安SIMを使えるようになっています。
格安SIMは本当に料金を節約できるものなの?
格安SIMの料金はキャリアの料金と比べてどのくらい安いのか格安SIMの借り受けが一番多いNTTドコモの回線を例にとって比べてみましょう。
ドコモの回線を新規に契約した場合の通信料金は以下のようになります。高速通信分は3GBのプランです。通話はかけた分数で課金されるプランです。docomo withの対象のスマホを購入した場合月々1,500円の割引があります。機種代金は一括で支払う設定です。
シンプルプラン(税込価格)
(スマホのプラン 2年間の定期契約あり) 1,058円/月
高速通信分ベーシックパック~3GBまで 4,320円/月
インターネット接続サービス 324円/月
docomo with -1,620円/月
合計 4,082円/月
これに対し格安SIMの通信料金をみてみましょう。2018年3月時点で国内の契約数が多い格安SIMは「楽天モバイル」「mineo」「OCN モバイル ONE」の3社です。その3社の格安SIMで比べてみます。通話はかけた分数で課金されるプランです。高速通信分は3GB〜3.3GBのプランです。機種代金は一括で支払う設定です。
高速通信分3GB+音声通話のプラン(税込価格)
月額基本料金 1,728円
格安SIMは無料通話がついていない高速通信分3GB+音声通話プランだと各社1,728円が基準の料金です。対してドコモは4,082円です。その差額が2,354円。1年間で考えると28,248円、2年間で56,496円の差が出ます。同じような条件で比べると格安SIMを使ったほうが通信料金を節約できるという結果になりました。
本当に格安SIMは良いことばかりなのか?
格安SIMの良いところは毎月の通信料金を節約できるということと、契約がWEB上だけで完結し店頭に行く必要がないことろです。ただ、通信料金が安いのには理由があるし、機能的なデメリットが実は多くあるのです。
安いけれど格安SIMの料金に関するデメリットはある
同条件のデータ通信+音声通話プランで比較すると確実に格安SIMの方が料金は安くなります。しかし、音声通話のプランをかけ放題にするとドコモ,au,ソフトバンクの方がお得になることがあります。
通話を頻繁に使う人は通話料金が高くなる事がある
文ドコモ,au,ソフトバンクは契約時にかけ放題のプランを同時に申し込む場合が多いです。かけ放題でも5分間までの通話なら何度かけても同じ料金というプランと時間無制限のかけ放題のプランがあります。
格安SIMにもかけ放題のプランがあります。しかし、時間無制限ではなく10分間の間であれば通話料が無料になるというオプションプランがほとんどです。音声通話プランにオプション料金の918円(税込)を追加することで利用可能です。格安SIM各社とも10分間は無料というのは同一です。OCN モバイル ONEはかける相手先3箇所は無制限になるプランも提供していますが、オプション料金がさらに高くなります。すべての通話で時間無制限かけ放題というのはキャリアだけです。
格安SIMの10分間かけ放題のプランは10分をこえると30秒10円が課金されます。かけ放題の10分間をこえて連続30分通話すると余分に20分間の通話料金432円がかかります。30分通話を月に15回すると仮定すると通話料金は余分に6,480円かかるので、合計が8,208円(税抜)になってしまいます。
ドコモのカケホーダイプランは7,020円なのでこの時点でドコモのプランの方が安くなります。通話を10分をこえてかける回数が多い人ほど格安SIMを使うより、ドコモ,au,ソフトバンクを使ったほうが毎月の通信料金が安くなることがあります。
料金の支払いはクレジットカードのみの会社が多い
料金の支払方法もキャリアと格安SIMでは違います。ドコモ、auの支払い方法は、クレジットカード、口座振替、請求書払いに対応していて、ソフトバンクはクレジットカード、口座振替に対応しています。
格安SIMは口座振替の支払いに対応しておらず、クレジットカードのみという会社も多いです。口座振替に対応しているのはUQモバイル、BIGLOBEモバイル、Ymobile、OCN モバイル ONEなどです。それ以外の格安SIMは契約時にクレジットカードが必要です。契約の前にクレジットカードを作らないといけないので、クレジットカードを持っていない大学生などは契約まで時間と手間がかかります。
格安SIMの機能に関するデメリットについて
格安SIMの料金面からみたデメリットは2つあったのですが、機能についてはどうでしょうか。こちらも契約する前に気をつけておいたほうがいいことが多くあります。
これまで使えたキャリアのメールアドレスが使えない
格安SIMの基本機能の中のデメリットで一番最初に考えないといけないのはドコモ、au、ソフトバンクのキャリアメールアドレスが使えなくなることです。ドコモ回線の格安SIMはドコモのキャリアメールが使えると思っている利用者が多いのですが、キャリアの回線から格安SIMの回線にMNPで電話番号を変えずに乗り換えてもキャリアのメールアドレスは使えません。場合によってはGmailなどの別のメールアドレスを用意しなければいけません。
格安SIMも契約すると格安SIMの会社のメールアドレスが使える場合が多いですがキャリアメールとは異なります。ケータイメール扱いにならないので、PCメールの受信拒否、ケータイメールのみ受信可になっていると格安SIMのメールアドレスで送信しても相手に届かない状況がおこります。ここが一番気をつけないといけないところです。
通信速度が遅くなる事がある
格安SIMは大手キャリアから回線を借り受けしている関係上、キャリアに比べて接続帯域が狭くなっています。接続帯域が狭いので多くの人が通信を利用する通勤の時間帯や昼休みの時間帯は速度が落ちる傾向にあります。
車を例にとるとこのようなイメージです。車線の数が違う2本の道路があるとします。広く車線の多い道路は車の台数が多かったとしても交通の流れはスムーズです。しかし、車線が1本だけの狭い道路は車の台数が多くなると流れが悪くなります。
それと同じように接続帯域が狭いところに利用者が多く殺到するとその帯域が混み合うことになるので通信速度が落ちてしてしまいます。格安SIMは帯域が狭いので通信速度が低下しやすいのです。キャリアの場合は接続帯域が広いので通信速度の低下が起こりにくいです。
テザリング機能が使えない機種がある
ドコモ回線の格安SIMはSIMフリーの機種を使えばAndroidでもiPhoneでもテザリングは可能です。テザリング機能が使えない機種はもともとドコモで販売されていたAndroidスマホ、または現在販売されているAndroidスマホです。これらの機種はSIMロック解除をしてもテザリング機能が使えません。iPhoneはテザリング機能が使えます。
auの回線の格安SIMはの機種はSIMフリー、auで販売されている(されていた)機種ともにテザリングは可能です。しかしiPhoneはテザリング機能は現在使用できません。
ソフトバンク系の格安SIMも機種によりテザリング機能が使えないことがあります。そう考えるとテザリング機能を使うのであればSIMフリーの機種でドコモ系の格安SIMを使う組み合わせがベストです。
格安SIMのデメリット-機能について
格安SIMの機能的なデメリットは他にもあります。通信サービス系でも大手キャリアにはできることが格安SIMではできないことがあります。
今自分が使っている機種が使えるとは限らない
ドコモの機種はドコモ系の格安SIMしか使えません。同じようにau、ソフトバンクの機種もそれぞれに対応した格安SIMしか使えません。SIMロック解除を行えば異なるキャリア系の格安SIMを使うことができるようになります。
ドコモ系の格安SIMはiPhone、AndroidともにSIMロック解除をしていないドコモで販売されている機種、そしてSIMフリーの機種ともに格安SIMを使うことができます。
au系のSIMの場合、au VoLTE 対応 SIMを使うときにはSIMロック解除をしないと使えません。今使っている機種がSIMロック解除されていなければau VoLTE 対応の格安SIMは使えません。SIMロック解除は契約者が行うときはネットですぐに解除できますが、白ロムを購入した時点でSIMロック解除がされていなければ契約者ではない所有者が解除できないので、その機種ではau VoLTE 対応 の格安SIMは使えません。ここは注意すべき点です。
LINEモバイル以外ではLINE ID検索が使えなくなる
LINEのID検索はキャリアの契約内容に基づいた年齢認証が必要なため、キャリア以外の格安SIMではLINEのID検索ができない仕様になっています。
今のところ格安SIMの中でLINE ID検索ができるのはLINEモバイルだけです。LINEモバイルはLINEが販売している格安SIMなのでIID検索が可能になっているのです。
それ以外の格安SIMを使う場合はID検索ができません。友達を追加するときにはふるふるを使うかQRコードで登録をする必要があるため不便になります。
公衆の無線LANが使えない格安SIMがあるのでSIM選びは慎重に!
公衆無線LANを賢く使って快適に通信しようと思えば、公衆無線LANに接続できるサービスを提供している格安SIMを使う必要があります。機種もサービスを提供している会社の機種を選ぶようにすると公衆無線LANがすぐに使えます。例えばOCN モバイル ONE、UQ mobile、NifMoなどは追加料金無しで公衆無線LANに接続できるサービスを提供しています。
その他の格安SIMでも公衆無線LANのサービスはありますが、有料での提供となっているものが多いです。契約した後に公衆無線LANが使えないSIMであったり、有料だったりするので、公衆無線LANを使うつもりなら無料で利用できる格安SIMを選ぶようにしましょう。
便利だったキャリア決済サービスなどが使えなくなる
大手キャリアから格安SIMに回線を切り替えると、それまで便利に使っていたキャリアの決済サービスは全て使えなくなります。これはキャリアが提供するサービスなので格安SIMでは同じようなサービスを提供していないからです。今までキャリア決済サービスを頻繁に利用してていた方は格安SIMに切り替えるときに慎重に考えたほうがいいでしょう。
格安SIMのデメリット-契約について
格安SIMの契約は大手キャリアのように店舗に行き契約するスタイルではなく、WEB上で契約をするスタイルがほとんどです。格安SIMの契約についても気をつけなければならない点がいくつかあります。
格安SIMを取り扱っているお店が少ない
近頃では大手量販店でも格安SIMを取り扱うようになりました。ただし、取り扱われている格安SIMの会社はごく限られたものです。すべての格安SIMが大手量販店で購入できるわけではありません。
また、実店舗を全国に展開する格安SIMの会社はありますが、主要都市に限られていて、どこの地域でもその店舗で格安SIMが購入できる購入はできません。相対的に見て格安SIMを販売している実店舗は少ないのが実情です。
乗り換えをしてから通話できない期間がある
MNPで番号を同じままキャリアから格安SIMに乗り換える時、通話ができない期間があります。以前は切替期間の2日ほど通話ができないというのが当たり前でした。しかし、今は格安SIMが自宅に届いてから回線の手続きをWEB上ですることにより切り替えができるようになってきました。
ただし、MNPの場合は自宅で切替可能な格安SIMでも即時に切り替えができず、2,3時間はかかるのでその期間は通話ができないことになります。切り替えの時間を電話がかかってこない深夜や早朝にするなど考えて切り替えをしなければなりません。
大手に比べるとアフターサービスが充実していない
大手キャリアで契約をして携帯電話やスマートフォンを使っているときに何か不具合が起こったときはキャリアの店舗に相談に行けば解決することがほとんどです。本体が故障した時は代替機を貸してくれるので助かります。
しかし、格安SIMは使っていて不具合が出たときにはチャットやメール、電話での相談になります。実店舗の数が少ないので店舗に行ってみてもらうということがなかなか難しいです。格安SIMだけの購入の場合はもちろん、格安SIM+本体のセットで購入した場合も故障による代替機の貸し出しサービスをしているところは少ないです。格安SIMのアフターサービスは必要最低限のものだと理解しておいた方がいいでしょう。
初期設定を自分で行う必要がある
実店舗で格安SIMを購入して、その場で設定してもらう場合を除いてほとんどは自分で初期設定をしなければなりません。格安SIMが届いてからAPNの設定等をして通信通話ができる状態にします。今まで使っていた機種のSIMだけを切り替えるときはAPNの設定くらいですむのですが、機種を帰る場合はデータの移行も必要になります。
キャリアでの機種変更はアドレス帳の移行もしてくれますが、格安SIMを自宅で切り替えるときにはすべて自分でしなければなりません。設定の仕方は説明書に書かれてあるので、その通りにすれば大丈夫なのですが、ある程度回線の仕組みとスマートフォンの扱いに詳しくないと初期設定をすることがやや難しく感じるでしょう。
格安SIMはデメリットをよく考えて乗り換えしよう!
格安SIMは毎月の料金がキャリアに比べて安くなるのが大きなメリットです。その反面デメリットも多いので、メリットとデメリットをよく考えて切り替えるようにしましょう。
設定を自分でするために若干の勉強が必要
設定を目の前で説明してもらいながらするという事ができない格安SIMなので、設定の方法は自分で勉強しながらすることになります。また、テザリングの仕方やキャリアメールではないメールアドレスの登録法とかLINEの友達追加の方法など、通信だけではなくその他にも調べて設定しなければならないことが多いです。そのあたりの知識を勉強する必要があります。
機種が使えず購入するなど料金が高くなる事もある
今使っている機種がそのまま使えるのであればいいのですが、使えない場合は新しく本体を買い替えて、それから格安SIMを使うということも考えられます。格安SIMも本体と一緒に購入すると割安になるキャンペーンを行っていますが、本体代金を分割で購入すると毎月の料金は高くなります。
また、SIMフリーのスマホや白ロムのスマホを購入するときは一括での支払いが多いですから初期費用が高くなります。特にiPhoneの最新機種のSIMフリーモデルは10万円前後なので一度に支払う額が高くなります。
格安SIMのデメリットのまとめ
格安SIMは広く知られようになりました。料金的な安さがクローズアップされがちですが、格安SIMを契約するとき、使うときにはデメリットが確実に存在します。そのデメリットを自分で理解した上で格安SIMを使うようにしなければ、あとあと困ることが起こります。事前に情報をしっかりと入れておいて上手に格安SIMとつきあっていきましょう。