小規模企業共済等掛金控除とは|控除の上限や対象となる掛金など









自分でご商売をされている個人事業主の皆さん、将来会社を辞めた後に退職金がないのは不安だな、とか、自分でお金を積み立ててもそれも含めて税金を取られるのは抵抗があるな、というような心配ごとがありませんか。

私もそのような個人事業主の1人ですが、実はその心配ごとを解決させる方法があります。
それが小規模企業共済と小規模企業共済等掛金控除です。
これに加入すれば引退時の退職金の準備もできますし、その分の税金も安くなるのです。

そこでここでは、その小規模企業共済と小規模企業共済等掛金控除の内容について詳しくご紹介します。

小規模企業共済等掛金控除とは?

小規模企業共済等掛金控除とは、「個人事業主が事業を廃止した場合に退職金に代わる共済金、つまり積立金」を積み立てるために払い込んだ金額、つまり掛金を、毎年の総所得金額、退職所得金額、あるいは山林所得金額から差し引いて所得税と個人住民税を安くするための所得控除のことです。

小規模企業共済に自分で加入しておけば、その掛金に共済によって上乗せされた金額を、退職金として受け取ることができるのです。
これに加入することによって、私は引退後の生活設計を作ることができて安心しました。

ただいきなりそういわれてもピンとこない方が多いでしょう。

そこでまずは小規模企業共済について簡単にご紹介します。

まず小規模企業共済には以下の種類があります。

・個人事業を廃業した場合、本人が亡くなった場合に受け取れる共済金~共済金A
・65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方が受け取れる共済金(老齢給付)~共済金B
・個人事業が法人化したため、小規模企業共済の加入資格がなくななり途中解約をした場合の返戻金~準共済金
・任意解約、掛金を12か月以上滞納した結果退会された場合、法人化して加入資格はなくならなかったが自主的に解約した場合~解約手当金

小規模企業共済を退会する場合には、以上のどれかに当てはまるはずですから、その際には該当する共済金が受け取れるわけです。

ではどのくらいの金額が受け取れるのでしょうか。
それは加入していた年数と、掛金の金額によって異なります。

まず共済金Aの場合、

5年(掛金合計額:600,000円)~621,400円
10年(掛金合計額:1,200,000円)~1,290,600円
15年(掛金合計額:1,800,000円)~2,011,000円
20年(掛金合計額:2,400,000円)~2,786,400円

共済金Bの場合は、

5年(掛金合計額:600,000円)~614,600円
10年(掛金合計額:1,200,000円)~1,260,800円
15年(掛金合計額:1,800,000円)~1,940,400円
20年(掛金合計額:2,400,000円)~2,658,800円

準共済金の場合は

5年(掛金合計額:600,000円)~600,000円
10年(掛金合計額:1,200,000円)~1,200,000円
15年(掛金合計額:1,800,000円)~1,800,000円
20年(掛金合計額:2,400,000円)~2,419,500円

つまり、たとえば共済金Aの場合、20年加入していれば約年0.8%の利息が付いて戻ってくる、というわけです。

0.8%という利息を低いと考えるかどうか・・。

確かに投資信託や株を運用すればこれ以上の利息にはなるでしょう。しかし、それらはまず逆に損をするリスクもあります。そして、その購入金は収入から出すわけですから、課税対象です。さらに配当金や売却益にも税金が20%かかります。

しかし小規模企業共済の場合は、第1に(20年未満での解約でなければ)元本割れはありません。
そして以下で述べる通り、第2にその掛金の額の分は完全に無税です。
それであれば、同じく1000万円までは元本保証の定期預金の利率が年0.5%を切る時代にあって、年0.8%は安全でなおかつ有利な積み立てとは言えないでしょうか。

小規模企業共済については下記の記事で細かく解説しています。
小規模企業共済とは|メリットとデメリット・加入方法まで徹底解説

小規模企業共済等掛金控除の対象となる方や対象の掛金は?

では小規模企業共済にはどのような人が加入できるのでしょうか。
これは会社に雇われて退職金などを保証されてなる人以外の将来を保証するために設けられた共済金ですので、一般のサラリーマンは加入できず、加入できるのは以下の人だけになります。

・建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを経営し、かつ常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主、共同経営者、または会社等の役員
・商業(卸売業・小売業)、宿泊業・娯楽業を除くサービス業を経営し、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主、共同経営者または会社等の役員
・事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員
・常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
・常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を行っている農事組合法人の役員
・常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員

ですのでアバウトに言ってしまえば、社員20人以下の会社を経営する個人事業主の方は資格を有する可能性が高いですから、自分が該当するかどうかをしっかり確認してみましょう。

そしてその小規模企業共済等掛金控除の対象となる共済金は小規模企業共済だけでなく、以下の3つが含まれます。

  • 「独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約
  • 個人型確定拠出年金
  • 扶養共済制度

1つは、「独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約」です。これが狭い意味での小規模企業共済で、税金の控除になるのはここに払い込む掛金です。
またその掛金は自分で決められます。具体的には、月額1,000円から7万円までの範囲で500円単位になります。この金額は途中で増額または減額もできますし、前納することによって、更に一定割合の前納減額金という加給金を受け取ることができます。

もう1つが小規模企業共済と同じような、個人事業主の方が退職後の生活設計のために自分で積み立てる個人型確定拠出年金です。
「個人型」というのは、これに対して企業が退職金の代わりに企業の費用で積み立てる「企業型」があるからです。
小規模企業共済等掛金控除は個人事業主の方が対象なので、「個人型」に限定されているわけです。この個人型確定拠出年金は「iDeCo(イデコ)」とも呼ばれています。

また確定拠出年金は、退会時に受け取る金額は決まっていません。自分で運用する方式なので、大きく儲かる場合と場合によっては損をして元本割れになる場合もあるからです。

掛金は5000円以上1000円単位でこれも自分で自由に設定します。ただし小規模企業共済とは違って、前納制度はなく、掛金の変更も1年に1回だけしかできません。そういう意味では小規模企業共済より不便な制度です。

3つめが、地方公共団体が心身障害者に関して実施する扶養共済制度ですが、これは今回の個人事業主の方の退職後の生活安定の話とは別のことになるので、説明は割愛します。

コープ共済や県民共済、JA共済、全労済は小規模企業共済等掛金控除の対象か

この小規模企業共済加入の方の中には本人が亡くなった場合に、残された家族の生活保障をするために、生命保険に入っている人もいるでしょう。
その中には、コープ共済、県民共済、JA共済、全労済などもあるかもしれません。これも「共済」という言葉が名称に入るので、小規模企業共済の一部かと思うかもしれませんが、それは違います。従って、掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象にはなりません。

なぜならコープ共済、県民共済、JA共済、全労済は生命保険会社の販売する生命保険と同じ扱いなのです。
税額控除はあるものの、一般生命保険料控除だけです。1年間に払ったほかの生命保険の掛金と合算して計算したうえで、上限5万円までが控除額ですから、小規模企業共済等掛金控除に比べると格段に節税効果がありません。

ですから私はある会社の生命保険と全労済に加入していましたが、全労済は小規模企業共済と同じような返戻率だったので解約しました。

小規模企業共済等掛金控除の差し引き限度(上限金額)は?

では、小規模企業共済で控除できる金額はいくらまでなのでしょうか。その上限はあるのでしょうか。

結論的に言うと、「控除額」としての上限はありません。
その年に支払った掛金の全額が控除されます。つまり20万円積み立てていたら、20万円が丸ごと控除されるのです。
一般生命保険よりも節税の意味では格段の差がある、というのはこの点です。

ただし、税額控除としての上限はありませんが、掛金の上限はあります。
つまり、その掛金の年間支払額が、実質的に控除額の上限になります。とはいえ、その額は非常に大きいです。

まず小規模企業共済の場合は、月額掛金の上限は7万円です。年間の上限にすると84万円です。この金額が実質的な控除額の上限ですから、生命保険とは比べものにならないでしょう。

また確定拠出年金の月額の掛金の上限は、68,000円です。年間の上限は、816,000円です。これも生命保険と比べると段違いの多さです
。ただし確定拠出年金の場合は、国民年金の400円の付加保険料、国民年金基金の掛金額と合算して、上限を計算します。したがって、国民年金基金が月14,000円だとしたら、確定拠出年金は、54,000円が上限になります。

小規模企業共済と確定拠出年金における所得控除の解説

ではここまで触れてきた、小規模企業共済と確定拠出年金の所得控除について整理してみましょう。

小規模企業共済について

小規模企業共済の掛金は「全額」を小規模企業共済等掛金控除として、課税対象となる所得から控除できます。さらに、1年以内の前納掛金も同様に控除できます。

ただしこれは個人で支払っているお金ですので、会社の経費で落とすことはできません。

シミュレーションをすると、たとえば課税所得200万円、月額掛金1万円の場合は、20,700円の税金減額、課税所得1000万円で月額掛け金7万円の場合は367,000円の減額です。これは非常に大きい金額です。私もこれでかなり得をした気分になりました。

また今の減税計算は所得税に関してだけの話です。実際はこのほかにも、個人住民税もこの所得控除した所得によって、計算されますからそちらでも減税され、その額もかなり大きくなるはずです。私の場合もこれは大きかったのですが、住民税は住んでいる自治体によって税率が変わりますので、ここでは例示しません。

確定拠出年金について

小規模企業共済と同じく確定拠出年金の掛金も、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、課税所得額から差し引かれます。ですからこちらも減税効果は非常に大きいです。

併用している場合の所得控除

ではここで問題になるのは、小規模企業共済と確定挙出年金の両方を積み立てている場合はどうなるのか、という点です。

一般的に考えると、どちらか一方しか該当しないような気がしますが、小規模企業共済等掛金控除の場合はここでも優遇されています。それは、小規模企業共済で払った掛金も全額控除され、同時に確定拠出年金で払った掛金(あるいは保険料)も全額控除される、ということだからです。

つまり両方を上限いっぱいまで払い込んでいた場合は、最大で年間で1,656,000円の税額控除になるということです。

年間の所得額にもよりますが、100万円を超える所得控除があれば、所得税が十数万円から数十万円は安くなり、確定申告をすれば還付されますので、ちょっとした臨時賞与気分になります。ですから小規模企業共済等掛金控除はぜひ使ったほうがよい制度なのです。

確定申告・年末調整に必要な小規模企業共済等掛金控除の証明書

この小規模企業共済等掛金控除を受けるためには自分で確定申告をするか、会社の経理の方で行う年末調整にこの小規模企業共済等掛金控除を反映させる必要があります。

まず小規模企業共済に加入している場合、確定申告か年末調整にに必要な書類が「小規模企業共済等掛金払込証明書」です。この証明書によって、1年間に払い込んだ掛金が証明されるのです。

この証明支署は「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」から送られてきます。9月までに掛金を納付していれば11月中旬に登録した住所に届きます。10月以降に加入した人は、翌年2月上旬に送付されます。ですから、後者の場合は年厚調整に間に合いませんので、自分で確定申告をして還付を受ける必要があります。

自分で確定申告をする場合は、「小規模企業共済等掛金払込証明書」には支払いが確定している掛金とそのまま年末まで続けて支払う予定の掛金の金額が記載されています。控除対象はその確定している金額と予定している金額の合計になりますので注意してください。

確定拠出年金に加入している場合は、国民年金基金連合会から「払込証明書」が送られてきます。あくまで国民年金基金連合からであって、払い込んでいる金融機関ではないことに注意が必要です。9月までに掛金が引き落とされていたら、10月末から11月初旬に証明書が届きます。10月以降から引き落とし開始であれば、翌年1月下旬に届きます。これも後者の場合は年末調整に間に合いませんから自分で確定申告をして、税金の還付を受ける必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

個人事業主で引退後の生活設計や生活資金計画に悩んでいる方にとって、小規模企業共済は大きな助力になるはずです。それに加えて、掛金がすべて税額控除されるという、サラリーマンでは考えられないような非常に大きな、税制の優遇措置もあります。

ですから悠々自適の引退後生活を送りたいという方は、以上を参考に小規模企業共済への加入を検討してみましょう。私自身、この共済制度への加入によって、精神的にも経済的にもずいぶん安心した環境で思う存分仕事ができていますのでぜひおすすめします。









この記事をかいた人

個人事業主。経営コンサルタント。