スタートアップなのに開発者は数百人!?「IssueHunt」によって開発者の未来が変わるかもしれない。

エンジニア向けのノートサービス「Boostnote」や、オープンソースに貢献することで報酬が得られるサービス「IssueHunt」を開発するBoostIO社。

同社は、事業としてメインで開発していた「Boostnote」をオープンソース化し、GitHub上で人気になったことから、世界中の人が開発に関わり、今もなおプロダクトがアップデートされつづけています。
そんな体験を通してオープンソースの可能性を追求し、さらなる発展を目指しリリースされたのが「IssueHunt」です。

今回は、オープンソースに真摯に向き合っているBoostIOのCEO・横溝一将氏に、オープンソースによって変わる未来についてインタビューしました。
エンジニアだけでなく、webサービス開発に関わるすべての人に読んでほしい内容となっています。

※オープンソース・・ソースコードが公開されており、誰でも自由に扱える状態にされたソフトウェアのこと。例えば、WordPressもオープンソースで開発されている。

横溝 一将(よこみぞ かずまさ)
BoostIO株式会社 代表取締役CEO。1993年生まれ、福岡県福岡市出身。2014年、大学在学中に福岡で会社を創業。WEB制作やシステム受託開発を行う。その後上京し、2016年4月にプログラマ向けのノートサービス「Boostnote」をオープンソースで公開、2018年6月にオープンソースプロジェクト向けの報奨金サービス「IssueHunt」をローンチ。



オープンソースによって新しい働き方を生み出したい

最初に、BoostIOの事業や現在注力していることについて教えてください。

もともとはBoostnoteというエンジニア向けのノートサービスを作っていて、現在は、オープンソースプロジェクトのissueに対して、誰でも投げ銭をすることができるIssueHuntというサービスをメインで運営しています。

IssueHuntは、issueに貢献してくれたコントリビューター(オープンソースに対して貢献してくれた人)に対して報酬や投げ銭ができるんでるサービスです。
シンプルなサービスですが、IssueHuntによって、オープンソースを使った新しい働き方が生まれるんじゃないかという挑戦的な意味もあって、力をいれています。

仕組みとしては、GitHubリポジトリをIssueHunt上で公開し、修正してもらいたいIssueに対して報酬を提示することで、貢献に対して報酬が支払われるというものです。
報酬は、貢献者に80%、残りがリポジトリのオーナーに入るようになっています。

BoostIO社CEOの横溝 一将氏。

なるほど。IssueHuntはどういうきっかけで生まれたのでしょうか?

Boostnoteを作ったとき、はじめてオープンソースにするという試みをやったのですが、いまは完全にオープンソースによって成り立っていて。
公開当初から世界中の人が開発に貢献してくれていました。

そんななか、Boostnoteの開発を通して、貢献してくれた人にどうやったらお返しができるのかということもずっと考えていたんですよね。
さらに、オープンソースは非集権化されていて、契約もなければ金銭の支払いもない・・そんな中でも活発に開発に参加してくれる人がいる・・、これは管理者もいらない新しい働き方になるんじゃないかいう話になったんですよね。

そういった状況をうまく解決し、新しい働き方をつくろうと思って生まれたのがIssueHuntです。

実際にIssueHuntをひろげていくために、まずはBoostnoteをIssueHunt上で公開してみたのですが、コミュニティの人数が一気に増えて、今まで以上に開発が活発になりました。いまも大量のプルリクエストが届いていてレビューが間に合っていない状況なんです。
もはや社内で何もしなくても自立分散的にサービスが拡大しています。

それはすごいですね。BoostnoteもIssueHuntもグローバル前提で公開されていますが、ユーザーの利用状況はどうなっているのでしょうか?

IssueHuntもBoostnoteも90%が海外ユーザーですね。国でいうとメインはアメリカと中国で、Boostnoteはほぼ全世界、IssueHuntはリリースしたのが今年の7月ですが、既に150ヵ国ほどで使われています。そして、そのうち、Boostnoteの開発に関わってくれている開発者は数百人います。

そもそも、はじめはBoostnoteがグロースしていったことで今に至ると思うのですが、初期のユーザーを集めるためにどのような施策を考えましたか?

なにか特別な施策をうったということはないですね。

急激に伸びたきっかけは、海外のメディアに取り上げられたことによって、GitHubのオープンソースのトレンディングに掲載されたことが大きかったです。

海外ではけっこう影響力のあるLinux系メディアである「OMG!UBUNTU」や「It’sFOSS」に掲載されたんですが、SNSでめちゃくちゃシェアされたんですよ。
そこからサービスを知られるようになってGitHubでもスターが急激に増えていきました。

ただ、そもそもメディアに取り上げられたのは、開発環境として利用していたGithub製のフレームワークであるElectronのトップページに使用実績として掲載されたことからですね。
いまでは多くの有名サービスがElectronを利用してますが、当時はまだ使ってるところが少なかったので載せてもらえたんだと思います。

なるほど。そこから急激にコントリビューターも増えたと思いますが、オープンソースコミュニティはどのような基準で管理していたのでしょうか?

そもそも、管理ということをやっていません。
基本的に送られてきたプルリクはクローズせず、ほぼ全部マージするんですよね。

考え方としては、完全に性善説の上で成り立っており、コミュニティの意見を尊重しています。
だからいまのboostnoteの機能の8割以上はコミュニティによって作られて、本当に僕らは土台しか作っていません

オープンソースは、優しい独裁者がいる社会主義のようなものが一番あっていると思っていて。
コミュニティをどこまで管理するかも、その独裁者の性格というか思想しだいな気がしますね。

では運営側としては最小限のリソースででプロダクトがまわせている状態なんですね。

そうですね。おかげでいまはIssueHuntのほうに注力できています。とはいっても、IssueHuntも来年あたりにはオープンソース化しようと考えています。

うちのように、オープンソースをうまく活用することで、世界中のクラウド、僕はこのクラウドを専門的な知識を持った群衆と定義しているのですが、彼らと共にプロダクトが開発できるのはとても魅力的なので、もっと日本の企業にもそれを知ってほしいんです。

世の中の風潮的には、オープンソースはマネタイズがしにくい、という認識を持っているところが多いと思うんですが、全然そんなことはなくて・・。両立は可能だと思っています。

いまは、国内のいろんな会社にオープンソースやりましょうと提案している状況ですね。
プロダクトのターゲット的に日本にこだわりは全く無いのですが、日本の企業とともにオープンソース文化を広めることは、日本人として責任を持って取り組みたいなと思っています。

日本でもオープンソース文化をひろげていきたい

BoostIO社日本チームの皆さん。5カ国のメンバーが在籍している。

現状、日本で盛り上がっていない分、オープンソース化の課題は多言語対応があると思うのですが、そこはどのように対応したのでしょうか?

課題は多言語化というよりも英語だと思います。盛り上がっているコミュニティはだいたい英語ですし、日本語でうまくいっているところは皆無に等しいと思います。

ただ、正直英語化といってもGoogle翻訳レベルでも良いと思っています。
それこそ、Boostnoteは公開当初、Google翻訳なども使ったりしてて変な英語でしたし、事実ネイティブの人からも指摘を受けていました。でも、それすらもオープンソース化していることによってネイティブの人たちがうまく修正してくれました。

実際にいまではBoostnoteのアプリは18ヶ国語に翻訳されているんですが、これも全部コントリビューターがやってくれました。
まあこっちが読めない言語がほとんどなので、その翻訳が正しいかどうかはわからないですが、信頼してマージしています(笑)

聞いている限り、オープンソースによって理想的なプロダクト開発ができており、スタートアップとしても成功パターンのひとつではないかと思いますが、過去の施策で失敗したことはありますか?

正直なところ「これは失敗したな・・」と思っていることは特にないですね・・笑

失敗ではないですが、いままでやってきたなかでオープンソースの難しい部分というか、課題は見えてきました。

まずひとつは、属人化してしまうこと。
オープンソースには管理者がいるのですが、その管理者がコミュニティ運営に疲弊したり、プロジェクトへのやる気が潰えたときに管理を辞めてしまう問題もたまに見られます。
その点で、最近話題になったevent-streamの一件からは色々考えさせられるものがありました。
いくらOSSはFork出来るとは言え、クリエイターの思想の塊のようなものを引き継ぐのは簡単ではありませんよね。

もうひとつは、企業運営によるバイアスがかかってしまうこと。
どうしても事業として考えると「その企業が儲けるためにやっている」と捉えられることもありますし、「その企業だから信頼できるorできない」という無駄な二元論で語られることもあります。
オープンソースは「必要としている誰かのためにみんなで作りましょう」という思想が強いので、コミュニティの公平性を保つ必要があります。

この2つの課題はいまのオープンソースコミュニティにはつきまとう課題なので、IssueHuntで取り組む必要があるなと感じています。

日本ではそもそも企業がオープンソースとしてプロジェクトを公開する文化がないのか、それとも認知されていないのかどちらでしょうか?

どっちもですね。オープンソースの文化はうちが作る気概を持ってやっていますし、日本でやれるのは僕らしかいないとも思っていますで、そこは気合いれてやっていこうと思っています。

ぼくらは、日本の企業に、もっと積極的にオープンソースプロジェクトをだしてもらいたいと思っています。
そして、「ただ使う」だけではなく、「貢献する」ことも是非やって頂きたいと思っています。コードを書くだけが貢献ではありませんので、寄付するもの良いですし、翻訳を手伝ったりするもの素晴らしい貢献です。
そういった行為が評価される社会に既にアメリカはなっているので、日本もそうしたいですね。
それによって、世界のオープンソースエコシステムがより活性化し、日本のITも更に発展していくのではないかと考えているからです。

具体的には日本でどのようにオープンソースの文化をひろげていくのでしょうか?

いままで会社としてゼロからオープンソースに取り組んできたなかで、いくつか再現可能な方法があるんです。
なので、ただオープンソースを啓蒙するだけではなくて、ノウハウなども提供しつつ、コミュニティが更に活性化する手助けができたらなと考えています。
そうやってどんどん日本国内でもオープンソースプロジェクトを増やしていって、成功事例を作っていきたいし、やれると思っています。

そういったサポートを含めた啓蒙は、ぼくらのビジネスとかを抜きにしても、オープンソースの持続可能性のために必要だと考えています。

ありがとうございました。

IssueHuntに興味がある人へ

世界中のオープンソースプロジェクトを対象とし「IssueHunt」を通じてスポンサードを行うオンラインイベント「IssueHunt Fest 2018」が開催されます。
本イベントは今後、毎年4月と12月に、それぞれ一ヶ月間かけて実施される予定で、今回が第1回目の開催となります。

■開催日時
2018年12月1日 0時 (PST) 〜 2018年12月25日 23時59分 (PST)
※日本時間だと、2018年12月1日17時〜12月26日16時59分

■詳細
イベント期間中、IssueHuntがスポンサードを募り、IssueHunt掲載のOSSに対して寄付支援を行う毎年恒例のイベントです。今回が初の開催で、MicrosoftやLINE、メルカリ、Framgia、CryptoeconomicsLabなどを始めとした企業がスポンサーに並んでいます。

興味がある人はぜひチェックしてみてください。

【イベントページURL】
https://fest2018.issuehunt.io/

インタビュー・編集 / 穂積かずゆき









この記事をかいた人

creive編集部

creive(クリーブ)編集部です。世の中に存在する"クリエイティブ"なものごとを、"アーカイブ"していきます。