「z-indexプロパティ」と聞くと、面倒くさいと顔をしかめる人もいるのではないでしょうか?「要素の順位を決めるプロパティであることはわかっている。でも、思い通りの順位にならないじゃないか」と感じたことはありませんか?
CSSの「z-index」は癖の強いプロパティです。単純な設定は問題なくても、複雑な設定になった途端、思い通りの挙動にはなりません。positionプロパティを使う人であれば、頻度高く使用するのが「z-indexプロパティ」ですが、理屈を知る必要があります。ここでは、その理屈を勉強しましょう。読み終わったら、「z-index」の使い方が理解できていることでしょう。
CSSの「z-indexプロパティ」とは
例えば、「positionプロパティ」を使用して、要素同士が重なった時に、その要素の順番を指定するCSSプロパティです。
数値の箇所に指定できる値は、以下の2つです。
値 | 説明 |
auto | これは要素の重なりを作らない値です。親要素と同じレベルで配置されるのみです。 |
整数値 | 最小値で「-2147483647」から「最大値:2147483647」までの整数のみが設定できます。小数点の設定はできません。 |
z-indexプロパティの基本的な使い方
では、早速、z-indexを使って、挙動の確認を行っていきましょう。サンプルとして、以下のhtmlを設定します。
[code lang=”html”]
<div class=”sample”>
<div class=”z-index-1″>
これは、z-index-1要素です。
</div>
<div class=”z-index-2″>
これは、z-index-2要素です。
</div>
</div>
[/code]
次に、以下のCSSを設定します。
[code lang=”css”]
.sample{
position: relative;
}
.z-index-1{
position: absolute;
top: 30px;
left: 30px;
background-color: red;
width: 100px;
height: 100px;
}
.z-index-2{
position: absolute;
top: 50px;
left: 50px;
background-color: blue;
width: 100px;
height: 100px;
}
[/code]
「positionプロパティ」を設定していますので、「z-index-1」と「z-index-2」は「sample要素」から距離が取られており、以下のように表示されます。「z-index-1」要素が上にきていることがわかりますね。
「z-indexプロパティ」は、このように要素同士が重なった場合、その重なりの順番を指定することで、表示を変える効果が出せます。例えば、「z-index-2」要素を最前面に持って来たいと考えたとします。その場合は、「z-index-2」に「z-index: 2;」と設定してみましょう。
[code lang=”css” highlight=”21″]
.sample{
position: relative;
}
.z-index-1{
position: absolute;
top: 30px;
left: 30px;
background-color: red;
width: 100px;
height: 100px;
}
.z-index-2{
position: absolute;
top: 50px;
left: 50px;
background-color: blue;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 2;
}
[/code]
すると、要素同士の順番が変わります。以下では、「z-index-2」の要素が最前面にきていますね。
「z-index」の効果がわかりましたね。このように、要素同士の重なりを制御します。
必ず陥るz-indexの罠:指定したのに効かない
上記の設定のように、簡単なケースばかりではありません。みなさんの中には、「z-index」の順序指定が効かない経験をした人もいるでしょう。例えば、次のように書くと、途端に指定が効かなくなります。「z-index-3」要素を用意し、その中に子要素として「z-index-3-1」を配置します。
[code lang=”html”]
<div class=”sample”>
<div class=”z-index-1″>
これは、z-index-1要素です。
</div>
<div class=”z-index-2″>
これは、z-index-2要素です。
</div>
<div class=”z-index-3″>
これは、z-index-3要素です。
<div class=”z-index-3-1″>
これは、z-index-3-1要素です。
</div>
</div>
</div>
[/code]
CSSは、以下のように前回と同じように設定します。
[code lang=”css”]
.sample{
position: relative;
}
.z-index-1{
position: absolute;
top: 30px;
left: 30px;
background-color: red;
width: 100px;
height: 100px;
}
.z-index-2{
position: absolute;
top: 50px;
left: 50px;
background-color: blue;
width: 100px;
height: 100px;
}
.z-index-3{
position: absolute;
top: 80px;
left: 80px;
background-color: yellow;
width: 100px;
height: 100px;
}
.z-index-3-1{
background-color: green;
width: 100px;
height: 100px;
}
[/code]
結果、「z-indexプロパティ」を指定していない場合の表示は以下のようになります。上から順に要素が積み重なっていくことがわかります。
次に、CSSでこの順番が逆転するように「z-indexプロパティ」の順番を変えて、「z-indexプロパティ」の指定した順番通りになれば良いのです。
[code lang=”css” highlight=”12,22,32,39″]
.sample{
position: relative;
}
.z-index-1{
position: absolute;
top: 30px;
left: 30px;
background-color: red;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 3;
}
.z-index-2{
position: absolute;
top: 50px;
left: 50px;
background-color: blue;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 2;
}
.z-index-3{
position: absolute;
top: 80px;
left: 80px;
background-color: yellow;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 1;
}
.z-index-3-1{
background-color: green;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 0;
}
[/code]
結果は想定に反して、思い通りの結果になっていないことがわかります。「z-index-3-1」要素が最も下に来るはずが、親要素の「z-index-3」が最も下に来ていますね。「z-index-3-1」要素の「z-indexプロパティ」は「0」、「z-index-3」要素の「z-indexプロパティ」は「1」で「z-index-3」要素が上に来るはずでした。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
これこそが、「z-indexプロパティ」の使い方を難しくしている点です。この理屈の理解には、「スタック文脈」というキーワードの理解が欠かせません。実は、この「スタック文脈」を理解し、頭に入れておくことで、「z-indexプロパティ」の難解さがあっという間に解けるのです。
スタック文脈を理解しよう。
スタック文脈とは、いわゆる「階層構造」です。例えば、以下のhtmlファイルですが、土台部分には、html文があります。その上に、「sample」要素(親)があり、その上に、「z-index-1」と「z-index-2」という子要素が乗っているイメージです。
[code lang=”html”]
<!DOCTYPE html>
<html lang=”ja”>
<head>
<meta charset=”UTF-8″>
<title>サンプル-position</title>
<link rel=”stylesheet” type=”text/css” href=”style.css”>
</head>
<body>
<div class=”sample”>
<div class=”z-index-1″>
これは、z-index-1要素です。
</div>
<div class=”z-index-2″>
これは、z-index-2要素です。
</div>
</div>
</body>
</html>
[/code]
絵にすると、以下のようなイメージですね。
「z-indexプロパティ」を指定しなくても、要素は積み重なります。まとめると、下から次の順で重なる傾向があります。
この階層構造を強く意識するのが「z-indexプロパティ」の特徴なのです。つまり、「z-indexプロパティ」が効力を発揮する順序とは、「同じ階層内での順序」であり、設定された「z-indexプロパティ」の値(数値)は、階層を超えて影響を及ぼしません。
つまり、以下のhtml文であれば、「z-index-1」と「z-index-2」と「z-index-3」の順序は「z-indexプロパティ」の値で順序を変更できますが、「z-index-3-1」の順番には、影響しません。「z-index-3-1」は、「z-index-3」の子要素ですので、の 「z-indexプロパティ」の値は、その親要素をベースとしての順序となります。仮に、「z-index-3-2」を新たに作成し、そこに「z-indexプロパティ」を設定したら、「z-index-3」要素内での順序が反映されるということです。これで、「z-indexプロパティ」の値の順序とは、全階層を通じた順序ではない、ということが分かったと思います。
次に、「z-indexプロパティ」を指定した場合、同階層でも順番に変化が生じます。基本的には、以下のような順番で配置されるので、覚えておきましょう。
テスト問題
では、「z-indexプロパティ」についてのテストです。以下のhtml文とCSSの指定があった場合、要素の積み重なりの順序はどのようになるでしょうか?
[code lang=”html”]
<div class=”sample”>
<div class=”z-index-1″>
A要素
</div>
<div class=”z-index-2″>
B要素
</div>
<div class=”z-index-3″>
C要素
<div class=”z-index-3-1″>
D要素
</div>
<div class=”z-index-3-2″>
E要素
</div>
<div class=”z-index-3-3″>
F要素
</div>
</div>
</div>
[/code]
[code lang=”css”]
.sample{
position: relative;
}
.z-index-1{
position: absolute;
top: 30px;
left: 30px;
background-color: red;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 3;
}
.z-index-2{
position: absolute;
top: 50px;
left: 50px;
background-color: blue;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 5;
}
.z-index-3{
position: absolute;
top: 80px;
left: 80px;
background-color: yellow;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 1;
}
.z-index-3-1{
position: absolute;
top: 10px;
left: 10px;
background-color: green;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 100;
}
.z-index-3-2{
position: absolute;
top: 20px;
left: 20px;
background-color: black;
width: 20px;
height: 20px;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 10;
}
.z-index-3-3{
position: absolute;
top: 40px;
left: 40px;
background-color: orange;
width: 20px;
height: 20px;
width: 100px;
height: 100px;
z-index: 50;
}
[/code]
選択肢
上から下へ順番に以下のような順番になります。
①A要素 → B要素 → C要素 → D要素 → E要素 → F要素
②D要素 → F要素 → E要素 → B要素 → A要素 → C要素
③B要素 → A要素 → D要素 → F要素 → E要素 → C要素
④D要素 → A要素 → B要素 → F要素 → C要素 → E要素
⑤A要素 → B要素 → F要素 → D要素 → E要素 → C要素
回答
もちろん、答えは、③ですね。以下のような表示になります。まず、A要素、B要素、C要素の順番が決まりますね。次に、C要素を土台として、D要素、E要素、F要素の順番が決まります。値の大きさがどれほど大きく、あるいは、どれほど小さいものでも階層を飛び越えては影響しない、ということが改めて分かったと思います。
まとめ
まとめとして、覚えておいて欲しいことを書きます。
- 「z-index」は、要素の重なりの順番を指定するプロパティです。
- 値の大きさによって、順番が決まります。
- 「z-index」は「positionプロパティ」と一緒に使用することが多いプロパティです。
- 「z-indexプロパティ」は、階層構造を強く意識するため、同階層での順位の指定ができても、階層を超えての指定はできない。