3Dプリンターはここまできた!時系列で辿る3Dプリンターの歴史

3Dayプリンターの濱中です。ここ近年、3Dプリンターというキーワードが大きな話題を集めました。

特に2013年は、多くのメディアがこぞっと取り上げ、突如3Dプリンターブームが到来。

急に注目を浴びるようになった3Dプリンターですが、実は30年以上前からある技術なんです。今回は、そんなあまり知られていない3Dプリンターの歴史について書いていきたいと思います。

1980年!最初に3Dプリンターを考えたのは日本人

初めて3Dプリンターができたのは1980年。名古屋の技術士であった小玉秀男氏が、3Dプリンターの元となる光造形の付加製造を開発しました。

新聞の印刷の仕組みを、3次元での製造に応用したのが始まりと言われています。

3d00
上記の画像は光造形の3Dプリンター。

モノづくりの在り方が変化する!

光造形の革新的な部分は、従来の製造機械がモノを削りだす引き算の手法に対して、光造形はモノを積み重ねていく足し算の手法にあります。
これにより、従来の方式では難しかった複雑なインターフェイスを表現することが可能となりました。

当時は、3Dプリンターという言葉はなく、Rapid Prototyping(ラピッドプロトタイピング)と呼ばれており、名前の通り試作品を早く作ることを目的としました。

今でこそ最終製品としても使われている3Dプリンターですが、当初は工業製品の試作品の利用が殆どだったそうです。

1987年!米国に行き「3Dプリンター」という名前に

小玉氏は特許の申請したのですが、企業からのリアクションはイマイチでした。実用化に乗り出した会社は殆どありません。
そして、小玉氏は特許の出願中に海外留学に行きます。次の手続きでは審査請求が必要になるのですが、留学中に審査期限が切れて無効になってしまいます。

その頃、米国ではベンチャー企業が立ち上がる

少し時間が経った1987年、米国でチャック・ハル氏が同様の特許を出願します。
特許名称は、光造形を用いる「3Dステレオリソグラフィー特許」。内容は、小玉氏の光造形の3次元造形と同じものです。
そのタイミングで、ラピットプロトタイピングから3Dプリンターという名前に上書きされます。

その後、チャック・ハル氏は「3D Systems」という会社を創業します。同社は、後に世界最大の3Dプリンター企業として成長します。
3d013D Systems社の代表的な機種「projet660」

米国の3Dプリンターメイカー「Stratasys」も、FDMという積層方式の3Dプリンターの特許を取得。FDMは、光造形とは違った方式で3Dプリントを行うものになります。

その後、2社は取得した特許を元に大きな成長を遂げていきます。これにより世界的に3Dプリンターの実用化が始まりました。
※ちなみに、世界で初めて3Dプリンターを作った小玉氏は特許による収入はゼロだそうです。

また、産業用は「3D Systems」、家庭用は「Stratasys」が得意なジャンルであるということも、それぞれが取得した特許の関係性も強く現れております。

2006年!オープンソースキットのRepRapが登場

3d02RepRap project – Wikipedia, the free encyclopedia

イギリス中心のメンバーが、デスクトップ型3Dプリンターのオープンソースハードウェアを立ちあげ。

世界初のオープンソース3Dプリンターとして、多くの方に利用されるようになります。現在でも、家庭用の3Dプリンターのモデルの多くがRepRapが元となっております。

2009年!3Dプリント技術の特許が切れる

米国で3Dプリント技術の特許が取得されてから約20年が経った2009年。ついにFDM方式の3Dプリント技術の特許が切れます。

それと同時に、多くの企業が3Dプリンター市場に参入するようになります。日々、3Dプリンターが進化・改良されるようになります。

特にFDM方式がメインな家庭用3Dプリンターは、企業から個人までが多く開発するようになりました。世はまさに、3Dプリンター時代を迎えることとなります。

Kickstarterなどのクラウドファンディングでも、新しい3Dプリンター機種が現れています。 家庭用3Dプリンターは、低価格化・デザインの多角化が進み、1万円を切る機種が登場しました。

3d03Kickstarter
>> Kickstarterで募集された「iBox nano」は、229ドル(2万3千円程度)という低価格ながらも高いスペックを持っております。

産業用3Dプリンターも発売当初は1台1億円程もしましたが、今では数百万~1千万円レベルでハイクオリティのものを購入することができます。

それに伴い、特許を取得した2つのメイカー企業が成長

当初、3Dプリンターメイカーは様々な企業が乱立していましたが、買収・合併が進み、「3D Systems」と「Stratasys」の2大勢力となっていきます。

2009年には、家庭用3Dプリンターの対抗馬の「Makerbot」が「Stratasys」に買収されたのも大きなニュースになりました。
2社で市場の70%(2014年時)を占めるという寡占市場になっていきます。

3d04Makerbotのプリンター

世界で初めて3Dプリンターを作った日本も、メイカーとしては乗り遅れることに…。

2012年!オバマが米国で3Dプリンターを後押し

「National Additive Manufacturing Innovation Institute(NAMII)」略してNAMIIは、3Dプリンターなどの積層造形技術を開発している研究施設です。NAMIIを3つ設立すると発表。

多国言語の米国では、製造の際に、2D図面よりもノンバーバル(非言語)な3Dプリンターの方が適しているという見解があります。

教育現場でも3Dプリンターを導入するなど、米国で3Dプリンターを支援するようになります。

2012年!クリアンダーソン著書の「MAKERS」がベストセラーに

米国のWired元編集長のクリス・アンダーソン氏がMAKERSを出版。

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MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

「ロングテール」「フリー」などの多くのITトレンドを示唆してきた同氏が、ものづくりの未来について述べております。

インターネットに起きた情報の民主化と同じように、ものづくりの世界でも個人が商品開発を行う時代が来ると示唆するものです。

この本がメイカームーブメントを決定づけるものになりました。本の力は偉大ですね。

21世紀の産業革命というテーマで、3Dプリンターの可能性を伝えております。

・3Dプリンタやレーザーカッターのようなデジタル工作機械がデスクトップに置かれるようになり、専門知識を持たない人たちでもモノをデザインできるようになった。
・デザインされたアイデアをオンラインのコミュニティで公開しながら、オープンイノベーションによって世界中の仲間と共創できるようになった。
・世界中にある製造ソーシング会社をネット経由で利用すれば、そこで生まれたアイデアをクリック一つで低価格・小ロット生産することができるようになった。
メイカーズムーブメント – Wikipedia引用

「MAKERS」は、世界的に大ベストセラーとなり、メイカームーブメントの指南書として今でも受け継がれています。

※筆者の周りの3Dプリンター事業者なども、「MAKERS」に影響を受けている印象があります。

2013年!3Dプリンターブームが到来?

2012年頃から、様々なホットな話題が出てくるように。

「3Dプリンターは、何でも作れる箱!」

そのキャッチコピーで、多くのマスメディアは3Dプリンターを取り上げました。
安価な家庭用3Dプリンターの登場から、ペット・人物のフィギュア作成サービスが出てきて、企業だけでなく一般の方も興味を持ち始めるようになりました。

Petfig on Vimeo

3Dプリンターのブームは歴史的にも何度かあったそうですが、「最終製品に使われる」という点もあり、今までで1番大きな盛り上がりを見せました。

医療、エンターテイメント、バイオ、アパレルなどの分野で活用されます。3Dプリンターは大きな可能性を見せることに。

3d07応用運動学に基づいて3Dプリンターで出力した服「Kinematics Bodice」

また、アベノミクスの影響が追い風となり、多くの企業が設備投資として3Dプリンターの導入を試みました。

大手企業も参入。日本市場も活発に

同時期に、キンコーズやリコーなどの有名企業が市場に参入してきました。2013年には動画コンテンツ配信業者DMMも参入。異業種問わず、多くのプレイヤーが増えてきました。

3d08SketchupでDMM 3Dプリントを試す1 | Analogfeeder

同じように家電量販店も3Dプリンターを取り扱うようになります。

ビックカメラ、ヤマダ電機などでも販売されるようになり、メディアだけでなくリアルの場でも3Dプリンターを見る機会が増えていきます。

2014年!銃の製造事件

3d093Dプリンター製の拳銃、所持容疑で初の逮捕 「殺傷能力あり」

盛り上がりを見せる中、大学教員の男性が3Dプリンターで銃を製造し逮捕されました。

「3Dプリンターは、殺傷能力の高いものを安価で簡単に作られるのではないか?」との声が多く挙がりました。 3Dプリンターの普及とともに、法規制についても考えさせられるようになります。

この事件以外にも様々なニュースが飛び交い、市場に盛衰を見せることとなります。

2015年~!ブームが過ぎ、安定期へ

2015年になると少しブームが落ち着きます。
ここ数年は激動といえる時代でしたが、業界のニュース自体は少なくなりました。
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※グーグルトレンドから3Dプリンターのワードで。検索のキーワードからユーザーの関心をグラフ化したもの

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ガートナー | プレス・リリース |ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル: 2014年」を発表

また、業界の衰退を表すハイプサイクルからは、家庭用3Dプリンターは期待のピークを過ぎ、産業用3Dプリンターは安定期に入ってきました。
大きなニュースや出来事は起こらなかったものの、3Dプリンターは徐々に社会に浸透してきたといえます。

まとめ

最後に、3Dプリンターの歴史について纏めてみます。

・元々3Dプリンターは30年以上も前からある歴史の長い技術
・3Dプリント技術の特許が切れたことにより、多くの企業が参入し活発化した
・家庭用3Dプリンターが安価になり、かつMAKERSの本が後押しを行ったことでブームに火が付いた
・個人が銃の製造に使うなど、ネガティブなニュースも飛び交い、安定期へと落ち着いていった
・現在は以前ほど騒がれてはいないが、新技術の開発も着実に行われている

2016年の現在、3Dプリンターは以前のブームに比べると影を潜めていますが、企業の活用は年々増えていっています。

技術自体は日進月歩で進んでおり、一般的な活用が増えてくるかもしえません。まだ先の見えない業界ですが、大きな可能性を秘めている業界だと感じています。

今後の3Dプリンターの進化に期待しています。